Research Abstract |
平成21年度は竹マルチが周辺の水環境へ与える影響を調査するため,現地調査,竹チップの成分分析,溶出液分析および簡易ライシメータによる水分と溶質の移動実験を行った. 現地調査 竹チップの種類および使用方法について福岡県柳川市の業者および農家を視察 大きめのチップは雑草防除に,粉状に粉砕したチップは堆肥化利用やすき込みによる農業利用に,圧力を加えてすり潰したチップ(以下,竹破砕物)はマルチ材に有用である等の情報を得た. 実験(1) 竹の成分分析および竹破砕物から溶出する成分分析 モウソウチクを伐採後,竹チップと竹破砕物を作成し実験試料とした.竹の化学組成は質量比で炭素(C)47%,酸素(O)46%,水素(H)6%,窒素(N)1%であった.試料10cmを降雨(44mm/day)にさらし溶出成分を分析した結果,竹破砕物からはK^+が420ppm, TNが26.8ppm, TPが28.9ppm, DOCが285.5ppm, EC値が1.1mS/cmの溶出水が見られた.竹チップからはより高い値が見られ,とくにK^+が920ppm, EC値が4.6mS/cmで高かった.EC値の上昇はK^+濃度によるものと考えられる.実験カラム内に竹破砕物を5cmと10cm厚さで設置し,チューブポンプを用いて4mm/hrで蒸留水を150時間滴下した.竹破砕物(厚さ10cm)の溶出水では,実験開始後23時間で最大EC値1.6mS/cm, TNでは19時間後に最大値46.0mg/L, TPでは33時間後に最大値47.1mg/L, DOCは33時間後に最大337.6mg/Lを示し,どの値も時間経過とともに低下した.150時間でそれぞれTN 206mg, TP 236mg, DOC 1660mg, K^+ 2232mgが溶出し,環境負荷を与える可能性が見られた.また,溶出水には着色が見られた. 実験(2) 竹破砕物からの溶出成分が作土層と地下水へ与える影響調査のためのライシメータ試験 表面流出が起こる場合は,流出水のEC, TN, TP, DOCの値は高く,着色もみられた.土壌中では,土壌面から15cmのK^+, TN, TP, DOCの濃度が高かった.物質収支の結果から,溶出成分の30%程度が表面から流出し,半分以上は土中残留と考えられ,とくにK^+は肥料効果が期待できるほどの値となった.
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