Research Abstract |
竹チップ等の有機性資源の農業利用が進む中で,高圧で竹をすり潰した竹破砕物を用いたマルチ栽培が周辺水環境へ与える影響調査および,肥料効果,節水効果を評価した.また,有機性資源である竹破砕物を土壌へ鋤きこんだ後の分解速度をCENTURY MODELを用いて評価した.その結果 (1)竹破砕物をマルチした大豆のポット栽培実験から,その節水効果は,厚さ2cm,4cmともに20%程度でビニルマルチと同程度見込めると考えられた.また,竹破砕物をマルチした春菊のポット栽培実験では,乾燥質量は対照区と比べ2cmマルチで減少し,竹抽出液(2cm)は同程度,竹抽出液(4cm)で30%程度増加した.一方で2cmマルチ,竹抽出液(2cm,4cm)の施用によってカリウム含有量は20~80%上昇した.したがって,竹破砕物の抽出液から肥料の効果が認められたが,竹破砕物には保水機能があり湿害を起こす可能性も示された. (2)大豆栽培圃場を想定して,CENTURY MODELを用いた土壌中の有機物動態予測を行った.その結果,1回のみ竹破砕物を2cm程度施用した場合,土壌中の全有機炭素量は,約20年で施用しなかった場合とほぼ同じ値に落ち着くため,竹破砕物は20年でほとんど分解されることが予測された.また,マルチ厚さ2cm程度であれば毎年投入してもC/N比は20程度に落ち着き,鋤きこみ1回を行うことで20を越えないと予測された. 以上から環境負荷量が少なく,マルチ効果を発揮する竹チップ投入量は,2cm程度の厚さであると考えられた.さらに,周辺の水環境への負荷を軽減するためには表面流出が起こらない管理が有効であると考えられた.
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