2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ初期胚のエピジェネティクスにおけるメチル基経路の役割
Project/Area Number |
21780251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 俊太郎 Kyoto University, 農学研究科, 助教 (50447893)
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Keywords | ウシ / 卵母細胞 / 初期胚 / 着床前胚 / エピジェネティクス / メチル基経路 |
Research Abstract |
ウシ未成熟卵母細胞の体外成熟・受精・発生を行い、成熟卵子・1細胞期・2細胞期・8細胞期・桑実胚期・胚盤胞期の胚を得た。各発生段階の卵子および胚について、メチル基経路の主要な酵素すなわちMAT1A, MAT2A, MAT2B, AHCY, MTR, BHMT, SHMT1, SHMT2, MTHFRのmRNAの発現をRT-PCR法を用いて調べた。その結果、MAT1AおよびBHMTを除く全ての酵素のmRNAが全発生段階の卵子・胚で検出された。MAT1Aは卵子および2細胞期までの胚で、BHMTは8細胞期を除く全ての卵子・胚で検出された。この結果から、ウシの卵子や受精直後の初期胚は完全なメチル基経路を持つことが示唆された。特に、MAT1Aは主要なメチル化反応実行組織である肝臓で特異的に発現している遺伝子と考えられてきたが、本研究の結果により、卵子や受精後の初期胚でも発現していることが初めて明らかになった。MAT1Aタンパク質(MATI/III)の発現を間接免疫蛍光染色法により調べたところ、卵子および8細胞期までの胚に強い発現が観察された。この結果から、卵子や受精直後の胚がユニークなメチル化機構を有していることが明らかになった。初期胚のメチル基経路の異常が胚の発生におよぼす影響を調べるため、ウシ体外受精胚の培養系にホモシステインを添加し、胚の発生とDNAのエピジェネティック修飾におよぼす影響を調べた。その結果、ホモシステインはウシ胚の発生を遅らせ、また胚のDNAのグローバルなメチル化を増加させることが明らかとなった。この結果から、ウシ初期胚の発生において、メチル基経路が重要な役割を果たしていることが示唆され、ホモシステインのようなメチル基経路内の代謝産物の濃度の異常が、エピジェネティクス攪乱因子(エピミュータジェン)となりうることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)