2010 Fiscal Year Annual Research Report
白色脂肪の褐色化機構の解明:新規肥満治療法の開発に向けた基礎研究
Project/Area Number |
21780261
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡松 優子 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教 (90527178)
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Keywords | 褐色脂肪 / 脱共役蛋白質 / 肥満 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、脂肪細胞特異的に細胞周期が停止するトランスジェニック(Tg)マウスの解析を行った。このマウスは、細胞周期のブレーキにあたるp27タンパク質を、脂肪細胞特異的に過剰発現している。 前年度の研究により、Tgマウスは褐色脂肪組織をほとんど持たず、褐色脂肪による熱産生が重要である寒冷環境において体温を維持することができないことがわかった。そこで、Tgマウスにおいて褐色脂肪の形成が著しく抑制されるメカニズムを探るため、ウェスタンブロット法により褐色脂肪組織におけるいくつかのタンパク質の発現量を調べた。すると、Tgマウスの褐色脂肪では細胞増殖マーカーであるPCNAの発現量が低下し、反対に細胞増殖を抑制する因子であるリン酸化Rbタンパク質量は増加していた。この結果から、Tgマウスでは、褐色脂肪細胞の分裂・増殖が抑制されているため、褐色脂肪組織の形成が抑制されていると考えられた。p27タンパク質が褐色脂肪細胞の分化調節にも関わっている可能性を調べるために、Tgマウスから胎児繊維芽細胞を単離し、初代培養を行った。In vitroで分化誘導すると、Tgマウスから得た胎児繊維芽細胞は分化効率が悪く、褐色脂肪細胞のマーカー分子であるUCP1の発現も少なかった。したがって、p27は褐色脂肪細胞の分化調節に関与している可能性が考えられた。 以上の結果から、褐色脂肪の組織形成には成熟褐色脂肪細胞の分裂・増殖が必須である可能性が考えられた。また、p27タンパク質が褐色脂肪の分化調節に関わる可能性が示唆された。一般的に脂肪組織は、前駆脂肪細胞の増殖とそれらの成熟脂肪細胞への分化により維持されていると考えられている。したがって、本研究から得られた結果は、これまでの想定を大きく覆す可能性があり、新たな肥満対策法の開発の基礎となることが期待される。
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