2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21780278
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山田 健太郎 大分大学, 全学研究推進機構, 助教 (70458280)
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Keywords | 狂犬病 / ウイルス / 街上毒 / 末梢感染 / 病原性 / 糖鎖 |
Research Abstract |
昨年度は狂犬病ウイルス街上毒1088株のNA細胞での連続継代により、末梢感染性のみが欠落したNA馴化弱毒変異株(1088-N30株)の確立に成功した。本年度は1088-N30株に認められた変異のうち、Gタンパク質にN型糖鎖の追加をもたらすR196S変異に着目して研究を行い、以下の結果が得られた。 限界希釈法によりR196S変異をのみを持つ1088株変異株のクローニングを試み、得られたいくつかのクローンのうち1088-N4#14株を選んで性状解析を行った。1088-N4#14株はR196S変異の他にPタンパク質G61E変異も有していたが、このG61E変異は他の野外分離株でも認められる変異であることから、この変異が末梢感染性に与える影響は小さいと考えられた。この1088-N4#14株は1088-N30株と同様にNA細胞において著しい増殖性の亢進が認められた。さらに1088-N4#14株のマウス脳内接種における病原性は親株および1088-N30株と同程度であったが、マウス筋肉内接種における病原性は親株に比べ低下していた。加えて、両変異株は筋肉内接種時にマウスに対して中和抗体の産生を強く誘導することも確認された。したがって、Gタンパク質へのN型糖鎖追加をもたらす変異が、NA細胞への馴化と末梢感染性の減弱に関与していることが示された。Gタンパク質へのN型糖鎖の追加、NA細胞での増殖性亢進および末梢感染性減弱は、これまでに確立された固定毒(実験室馴化株)でも認められることから、N型糖鎖追加は街上毒の固定毒化に関与するmolecular deteminantの一つであることが示唆された。また、グリコシダーゼや阻害剤を用いた解析により、R196S変異により1088株Gタンパク質に付加される主なN型糖鎖が高マンノース型から混合型もしくは複合型へ変化することを示唆する結果も得られた。
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