2009 Fiscal Year Annual Research Report
牛ピロプラズマ病抗病性をもたらす牛赤血球膜グライコフォリンAの分子多型解析
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21780282
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 弥生 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 博士研究員 (30396303)
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Keywords | 牛ピロプラズマ病 / グライコフォリンA / シアロ糖タンパク質 / 受容体 / シアル酸 |
Research Abstract |
グライコフォリンA(GPA)は赤血球の主要な膜1回貫通型シアロ糖蛋白質であり、細胞外領域に多数のシアル酸に富む糖鎖を持ち、マラリアなどの赤血球内寄生原虫の受容体として機能すると示唆されている。牛GPAも赤血球膜を1回貫通し細胞外領域に5カ所のO-結合型糖鎖修飾を受け得ること、赤血球膜上で巨大な500kDa以上の高分子複合体(GPAオリゴマー)を形成することを明らかにした。複合体形成機序は不明だが、GPAオリゴマーのPAS染色性・分子サイズに個体差が認められ、その背景には牛の品種・系統による遺伝的規則性が想定され、赤血球膜表面の性状に影響していると考えられる。一方、バベシア・タイレリア原虫の赤血球内寄生による牛ピロプラズマ病に対する抗病性に牛の品種・系統による違いが知られている。ヒト同様、牛GPAもバベシア・タイレリア原虫の受容体となる可能性が示唆され、本研究ではGPAの遺伝的背景(品種・家系・系統)がもたらす赤血球膜表面性状の差異と牛ピロプラズマ病に対する抗病性との関連について研究を行っている。 同一家系牛のゲノムDNAを用いてGPA遺伝子配列を比較したが、多型をもたらす変異はなかった。同じ牛の赤血球膜画分を得、牛血液型Fシステムにより血液型を決定しGPAオリゴマーのシアル酸含量を比較検討した結果、家系ではなく血液型と相関を示した。Fシステムを担う分子はGPBであり、遺伝子の重複による複数のアイソフォームの存在が実証された。またGPAオリゴマーの構成分子の探索を行った結果、CD58が含まれることが判明した。牛赤血球膜ではGPA、GPB、CD58などのシアロ糖タンパク質が複合体を形成しており、赤血球膜表面の構造は個体ごとに多様性をもつものと考えられた。
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