2009 Fiscal Year Annual Research Report
犬乳腺腫瘍の悪性化における上皮間葉化(EMT)現象とその臨床的意義
Project/Area Number |
21780285
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (40447363)
|
Keywords | 獣医学 / 癌 / 細胞・組織 / 上皮間葉化 |
Research Abstract |
本来強固な結合を持つ上皮系細胞が浸潤転移しやすい間葉系の形質へと変化する上皮間葉化現象(Epithelial-Mesenchymal transition ; EMT)は癌の悪性化に重要な要素であると考えられている。犬乳腺腫瘍はときに上皮系腫瘍細胞だけでなく間葉系腫瘍細胞が混在する病態を示し、また複数の乳腺に多段階の発癌を示すことのある興味深い腫瘍である。本研究では犬乳腺腫瘍の様々な悪性段階におけるEMT関連因子の発現解析を行うことにより犬乳腺腫瘍の悪性化機構を明らかにすること、また、それに基づくより正確な悪性度判定指標の策定や増殖ないし転移抑制を目的とする新規分子標的治療法の開発などの臨床応用を目指すことを目的としている。 平成21年度は、細胞株および臨床例におけるEMT関連因子の発現検索と病理学的悪性度の比較検討と実験モデルにおけるEMT関連因子の発現検索と病理学的悪性度や生体内動態との比較検討を計画し実験を行った。その結果、犬乳腺腫瘍自然発症例から得られた組織サンプルにおいてその約10%で間葉系細胞マーカーであるvimentinの発現がみられ、これらの組織所見は悪性であった。一方で上皮系細胞マーカーであるcytokeratinの発現パターンには明瞭な差異はなく、その他のEMT関連因子の検索を継続中である。また犬乳腺腫瘍細胞株におけるEMT関連因子の発現プロファイルを免疫染色やウェスタンブロットにより解析し、その運動能や浸潤能との関連およびマウスに移植した際の動態との関連を検討すべく予備実験を進め、本実験に移行する段階である。
|