2010 Fiscal Year Annual Research Report
犬の悪性腫瘍における内在性レトロウイルスの発現解析
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21780288
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
馬場 健司 山口大学, 農学部, 助教 (90452367)
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Keywords | 内在性レトロウイルス / イヌ / 悪性黒色腫 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に実施したイヌの自然発生悪性黒色腫の検体を用いたcDNAマイクロアレイのデータ解析を行った。本解析から、既知の癌関連遺伝子を含めたいくつかの遺伝子について発現の増加または低下が示唆されたが、本研究課題の目的である内在性レトロエレメントについては、対照検体と比較して明らかな発現量の差は認められなかった。その要因として、検体数(悪性黒色腫4検体、低悪性度黒色腫1検体、正常組織1検体)が不十分であったこと、正常組織の混入、犬種の差異、用いたマイクロアレイで解析可能なレトロエレメントが限られていることなどが考えられた。一方、イヌゲノムデータベースのin silico解析により新たに同定したレトロエレメントは、643アミノ酸残基をコードしており、レトロウイルスのエンベロープ蛋白に特徴的なモチーフがすべて保存されていた。系統樹解析の結果、本レトロエレメントは、βレトロウイルス属に分類されることが明らかとなった。本エンベロープ蛋白の性状解析を行うため、PCR法によりクローニングした本遺伝子を発現ベクターに組み込み、Hisタグ融合蛋白として培養細胞における発現を試みたが、目的とする蛋白の発現は認められなかった。現在、適切な発現ベクターと培養細胞の組み合わせの検討と発現調節領域の同定を行っている。一方、本エンベロープ蛋白を特異的に認識する抗体を作製するため、予想されるアミノ酸配列において抗原性が高いと推察される領域に匹敵するペプチドを合成し、ウサギに免疫を行ったところ、ELISA法にて高い抗体価を示す抗血清が得られた。この抗血清の本エンベロープ蛋白に対する特異性を確認することにより、悪性腫瘍組織における免疫組織化学的解析が可能になると考えられた。
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