2010 Fiscal Year Annual Research Report
月山湿原泥炭に優占的に生息する新規古細菌群に関する研究
Project/Area Number |
21780295
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
服部 聡 山形大学, 農学部, 助教 (40373352)
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Keywords | 古細菌 / 16S rRNA遺伝子 / 微生物多様性 / 低温環境 / メタン / 湿原泥炭 |
Research Abstract |
本研究は山形県月山湿原池塘泥炭に生息する未知の古細菌群の生理生態を明らかにすることを目的とした。前年度に引き続き、泥炭深度に基づく古細菌の菌叢解析を行うと共に、泥炭環境の物理化学的性質の解明および、泥炭深度ごとのメタン生成活性の評価も行った。泥炭を深度ごとに高速遠心分離処理することにより、各々の泥炭深度において間隙水を取得し、各種イオン、pH、電気伝導度(EC)、水分含量等を測定した。メタン生成活性は、バイアル瓶に各々の深度の泥炭と脱気滅菌済みの池塘水を混合、20℃で静置し、ガスクロマトグラフにより経日的に気層部のガスを測定することで評価した。泥炭からの微生物培養にはチタンを還元剤とするMES緩衝液ベースの微量元素培地を新たに作成・使用した。研究の結果、泥炭環境はpH4.8、EC約50~100μS/cm、水分含量約70~85%、イオン濃度数十から数百μM、酸化還元電位は-200mV以下であった。いずれの深度においても鉄イオンの存在形態はほぼ2価鉄であり、当該泥炭内が還元的な環境にあることが示唆された。また、スラリー実験の結果、泥炭の深度に依存したメタン生成活性の低下が見られた。菌叢解析においては、Crenarchaeota門のMiscellaneous GroupやMethanomicrobiales目、Methanocellales目に属する未知クローンが多く検出された。これらの結果から、当該泥炭においては上層部においてメタン生成古細菌の活性が高いことが強く示唆された。また、当該泥炭からの微生物培養の結果、メタノールや酢酸、水素等を基質とした培養系からコロニーを得た。現在これらの微生物について、その性状を明らかにするため純粋分離を進めているところである。
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