2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロンイメージングを用いたダイズ子実へのカドミウム移行メカニズムの解明
Project/Area Number |
21780303
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
伊藤 小百合 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 博士研究員 (20512221)
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Keywords | ダイズ / カドミウム汚染 / ポジトロンイメージング |
Research Abstract |
近年、ダイズのカドミウム(Cd)汚染が農業上の深刻な問題となっている。本研究では、ダイズ子実へのCd移行のメカニズムを明らかにすることを目的とし、研究計画に沿って以下の2つの研究を行った。 1. Cdのダイズ子実への輸送動態のイメージング画像取得と数理的解析法の確立 ポジトロンイメージングとオートラジオグラフィを用い、ダイズ植物体内のCd移行を画像化した。ポジトロンを放出する^<107>Cd(半減期6.5時間)と、ガンマ線のみを放出する^<109>Cd(半減期453日)を実験材料のダイズ植物の水耕液にトレーサとして投与した。生きたダイズ植物体内の^<107>Cdの動態をポジトロンイメージング装置(PETIS)により36時間撮像した。また^<107>Cd減衰後は、^<109>Cdの分布をオートラジオグラフィにより解析した。複数の放射性Cd核種を併用することで、分オーダーから月オーダーまでのCd動態を明らかにできる技術を確立した。 PETISにより、Cdが水耕液から根に吸収される過程、地上部へ移行する過程を撮像することに成功した。またPETISとオートラジオグラフィで得られた結果を総合し、Cdが2日以内に子実に到達すること、葉には3日後に到達することが明らかとなった。すなわち、Cdが葉を経由せずに直接子実に移行していることが示唆された。 2. 生育ステージの変化が子実へのCd輸送に及ぼす影響 上記1と同様の方法により、生育ステージの異なるダイズ植物にCdを吸収させ、最終的な収穫期におけるCdの体内分布を比較した。その結果、生殖生長期に吸収したCdは栄養生長期に吸収したCdよりも子実へ分配されやすいことが示された。 これまでダイズ子実へのCd移行のタイムスケールや経路は明らかでなかった。本研究によりこれらが明らかになり、Cdの子実への移行を抑制するためには、より直接的かつ短期的な対策が必要であることが示された。
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Research Products
(6 results)