2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790012
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲垣 冬彦 Kanazawa University, 薬学系, 助教 (80506816)
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Keywords | 有機化学 / ナカドマリンA / Pauson-Khand反応 / 天然物合成 / アレン |
Research Abstract |
本年度はPauson-Khand反応を活用したナカドマリンAの効率的不斉全合成に取り組んだ。その結果、L-ピログルタミン酸を出発物質として、天然品のエナンチオマーである(+)-ナカドマリンAの形式全合成を達成した。 6環構造(A-F環)を有するナカドマリンAの核となるABD環部分の合成として、アルキン末端にアルキル鎖を有するエンイン体を用いてPauson-Khand反応を行ったが目的の閉環体は全く得られなかった。種々検討した結果、アルキン末端のα位に二重結合を導入したジエンイン体を、Co_2(CO)_8と^nBuSMeを用いたPauson-Khand反応の条件に付したところ、良好な収率かっ高立体選択的に目的の三環性化合物が得られることを見出した。当初予定していたアレニルアルケン体を用いたPauson-Khand型反応を用いずとも反応が進行したため、続いてその後の環構築を行った。得られた環化体の二重結合、つまりPauson-Khand反応で必要であった二重結合部分をジオールに変換後、酸と処理することによりフラン環(C環)が生成した。このように、アルキン末端に導入した二重結合はPauson-Khand反応の反応性を促進するのみならず、その後のフラン環合成の足がかりとしても利用可能であった。ABCD環の構築後にA環上の不要な二重結合を還元すべく接触還元に付したところ、歪んだフラン環が優先的に還元された。これまでに報告されているナカドマリンAの合成研究でも同様の問題が報告されており、その直接的な解決法は見出されていなかった。しかしながら、D環上のアミン部の保護基を種々検討したところ、Fmoc基に変換することにより位置選択的な還元が進行し、目的物が得られることを見出した。これはおそらくFmoc基がフラン環部分を覆うように位置して還元を防いでいるためだと考えている。最後に閉環メタセシスによるE環構築とその後の官能基変換を経て(+)-ナカドマリンAの形式合成に至った。 来年度はPauson-Khand反応で得られた環化体の環拡大反応を検討し、類縁化合物であるマンザミンAやイルシナールAの合成を行う予定である。
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Research Products
(8 results)