2009 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインの位置制御法を基盤とする多置換芳香族化合物合成法の開発
Project/Area Number |
21790020
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
井川 貴詞 University of Shizuoka, 薬学部, 助教 (20453061)
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Keywords | ベンザイン / 位置選択性 / 環化付加反応 / 求核付加反応 / ホウ素化合物 / ケイ素化合物 / 誘起効果 / 溶媒効果 |
Research Abstract |
ベンザインは高い反応性を示す中間体であり、これを利用した多彩な反応が知られている。しかし、非対称なベンザインの反応位置制御は一般に困難であり、反応後は分離困難な位置異性体混合物となる場合が多い。そこで申請者はベンザインの3位に電気的に陽性な原子(ケイ素やホウ素)を配置することで、この問題点を解決しようと考えた。 1) シリルベンザインへのアミンの位置選択的求核付加反応 申請者は、シリル置換ベンザインの位置選択的Diels-Alder反応を以前に報告している(Angew.Chem.Int.Ed.2008,47,7673)。そこで今回、シリル置換ベンザインへのアミンの求核付加反応を検討した。その結果、フッ素アニオン存在下ベンザインを発生させると嵩高いオルト位へ選択的に求核付加反応が進行し、フッ素アニオンが存在しない条件でベンザインを発生させるとメタ位選択的に反応することが明らかとなった。 2) 温和な条件での3位ホウ素置換ベンザインの調製法の開発と位置選択的環化付加反応 申請者は既に、ホウ素置換ベンザインを発生させることに成功していたが(平成19、20年度科研費)、過酷な反応条件が必要であったため適用可能な基質が限定されていた。そこで、温和な条件下で発生可能な前駆体を種々検討した結果、iPrMgCl-LiClを用いる温和な反応条件下、ホウ素置換ベンザイン発生させることに成功した。次に、発生させたホウ素置換ベンザインと種々の4π電子系化合物を反応させ、高位置選択的に環化付加体を得た(Angew.Chem.Int.Ed.accepted)。 3) ホウ素置換ベンザインへのアミンの位置選択的求核付加反応 アミン存在下、HMPA/THFを溶媒としてホウ素置換ベンザインを発生させると、ホウ素の近傍(オルト位)へ選択的にアミンの求核付加反応が進行した。一方、ピリジン中では完全に位置選択性が逆転し、ホウ素から離れたメタ位にアミンが選択的に求核付加することが分かった。本法では、溶媒の選択のみで位置選択性の制御が可能である。
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