2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインの位置制御法を基盤とする多置換多環式芳香族化合物合成法の開発
Project/Area Number |
21790020
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
井川 貴詞 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20453061)
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Keywords | 有機化学 / 求核付加反応 / 環化付加反応 / ベンザイン / 位置選択性 / ケイ素 / ホウ素 / アライン |
Research Abstract |
ベンザインは極めて高い反応性を示す中間体であり、これを利用した多彩な反応が知られている。しかし、非対称なベンザインの反応位置制御は一般に困難であり、反応後は分離困難な位置異性体混合物となる場合が多い。申請者は昨年度までに、ケイ素およびホウ素官能基をベンザインの配向基として用い、アミン類の求核付加反応及びDiels-Alder反応を位置選択的に進行させることに成功している。本年度は、本法をヘテロ環や天然物合成に応用する研究、並びに新しいベンザイン発生法の開発研究を行った。 a)ベンザインを用いたヘテロ環化合物の選択的合成 ヘテロ芳香環は医薬品の生物活性発現に極めて重要であり、その合成法の開発は重要な研究課題である。我々は、シリルおよびホウ素置換ベンザインと官能基を有する1,3-双極分子との[3+2]環化付加反応を行い、位置選択的にヘテロ環化合物を合成するとこに成功した。このとき、ケイ素置換ベンザインとホウ素置換ベンザインでは全く逆の選択性を与えるため、本法を用いれば両位置異性体を作り分けることも可能である。 b)シリルベンザインの位置選択的Diels-Alder反応を利用したaloinの骨格合成 Aloinは、様々な疾病の治療に効果がある天然由来物質として知られており、aloinとその誘導体の生物活性に注目が集まっている。我々は、シリルベンザインとフラン類とのDiels-Alder反応を2回繰り返し用いることで、aloinに代表されるグリコシル基を有するアンスロン骨格を短工程かつ柔軟に合成可能な方法を開発することができた。 c)NfFを用いたベンザインの新規発生法 ベンザイン発生法の開発研究は古くから活発に行われているが、その反応条件や前駆体合成法、経済性及び安定性に問題があった。我々は、安価かつ安定なノナフルオロブタンスルホニルフルオリド(NfF)を用いた新規ベンザイン発生法を開発し、従来法と比較して、安価かつ効率的にベンザインを発生させることに成功した。
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