2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性疾患治療を目的とした機能性高分子を用いたナノ微粒子キャリアの開発
Project/Area Number |
21790041
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
綾野 絵理 慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (10424102)
|
Keywords | インテリジェントポリマー / PNIPAAm / PLA / DDS / ナノ粒子 / 相転移温度 |
Research Abstract |
本研究では、生分解性ポリマーであるポリ乳酸(PLA)及び温度応答性ポリマーであるpoly (N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm)を用いてPNIPAAm-PLA/PLAブレンドナノ粒子(温度応答性ナノ粒子)を作製した。PNIPAAmは水中において低温では水分子と水和することで親水性を示すが、32℃の相転移温度(LCST)を境に水分子が脱水和し、疎水性へと変化を起こす。この性質から温度応答性ナノ粒子は、低温では水和層形成によりステルス粒子(PEG-PLA粒子)同様の高い血中滞留性を有し患部に集積、炎症部位では炎症による熱で粒子表面の疎水性変化を起こし、細胞取り込み効率の向上が期待される。 当該年度は、炎症性疾患に使用するリン酸ベタメタゾン、FK506を粒子内に内封し、血清タンパクとの安定性、細胞内への取り込み観察を行った。血清中安定性では、温度応答性ナノ粒子は温度による表面特性変化を示し、LCST以下ではPEG粒子同様血清中で安定に分散していたが、LCST以上では血清との凝集体を形成し沈殿が生じた。脂溶性の高いFK506において血清タンパクとの相互作用を抑制できたことは、粒子の血中滞留性向上に寄与し、長期的な薬効発現による投与回数の減少が期待された。蛍光顕微鏡観察によるRAW264.7細胞へのPNIPAAm粒子の取り込みは、37℃では確認されたが30℃では確認されなかったことから、温度応答性ナノ粒子は温度による取り込み制御が可能であることが示された。PNIPAAmを表面修飾した温度応答性ナノ粒子は、LCSTを境に細胞膜透過性が変化し、温度による取り込み制御が可能なDDS製剤であることが示された。さらに、LCST以上では素早い薬物放出が起こることから、病態部位でのみ効果を発揮し、副作用の少ない製剤が期待される。
|