2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん微小環境応答性の細胞内取り込み促進型ナノ粒子の構築および抗腫瘍作用の検討
Project/Area Number |
21790049
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (60438041)
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Keywords | がん微小環境 / ドラッグデリバリー |
Research Abstract |
がん微小環境を利用して、血中滞留性および細胞親和性の高い薬物送達ナノ粒子を開発するために、腫瘍内pHが生理的条件に比べて低いことに着目し、この低pHに応答して膜物性が変化するナノ粒子を構築することを目的とした。つまり、生理的pHでは、生体成分との相互作用の低い負電荷粒子であるのに対して、腫瘍低pHでは表面電荷が正に転換するナノ粒子である。本年度は、新規微弱低pH応答性ペプチドをナノ粒子表面に修飾させた腫瘍低pH応答性ナノ粒子の特性を明らかにするために、ペプチドの構造活性相関、細胞内取り込みメカニズムおよび体内動態に集中して検討した。スクランブル配列および短いペプチドを合成し、細胞内取り込み活性を検討した結果、低pH応答性を示すには、その配列と一定の長さが必要であることが示唆された。さらに、CDスペクトルによりペプチドの二次構造を解析した結果、ナノ粒子に修飾した場合においてpH応答性の構造変化が認められたことから、ペプチドとナノ粒子表面との相互作用によるペプチド構造変化がpH応答性の細胞内取り込み活性に寄与していると考えられる。さらに、ペプチド修飾ナノ粒子の効率的な細胞質送達のメカニズムを解析するために、各種細胞内取り込み阻害剤共存下および低温下での取り込み活性を検討した結果、細胞膜との融合が関与することが示唆された。また、ペプチド修飾ナノ粒子の体内動態を解析するために、プラスミドDNAを封入したナノ粒子を担癌マウスへ尾静脈内投与し、内封プラスミドの各種臓器・腫瘍への分布をリアルタイムPCRにより定量した結果、ペプチド修飾ナノ粒子は、血中滞留性の高いポリエチレングリコール(PEG)修飾ナノ粒子と同程度の腫瘍集積を示した。本pH応答性ナノ粒子は、PEGを用いない新規の腫瘍標的DDSとして有望であると考えられる。
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