2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗酸化物質によるプロオキシダント効果の分子機構解明
Project/Area Number |
21790053
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
中西 郁夫 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70356137)
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Keywords | 活性酸素種 / 抗酸化物質 / 薬学 / 有機化学 / 反応機構 / ラジカル / プロオキシダント / 金属イオン |
Research Abstract |
今年度は、塩基性条件下におけるフェノール系抗酸化物質による活性酸素種やフリーラジカル生成の分子機構について検討した。酸素非存在下、アセトニトリル中、25℃で、ビタミンEのモデル化合物である2,2,5,7,8-pentamethylchroman-6-ol(PMC)に強塩基である水酸化テトラブチルアンモニウムを加えると、PMCのフェノール性水酸基が脱プロトン化を受け、対応するフェノレートアニオン(PMCアニオン)が生成した。この溶液に酸素を吹き込むと、PMCアニオンによる酸素の電子移動還元により活性酸素種の1つであるスーパーオキシドアニオンが生成した。これは、PMCアニオンが非常に強力な還元力を有することを示唆している。そこで、PMCアニオンの電子移動特性について検討するために、PMCアニオンと種々の置換基をもつP^-ベンゾキノン類との反応を行った。その結果、PMCアニオンは、酸素と同程度の一電子還元電位をもつテトラメチル-P^-ベンゾキノンを電子移動還元できることがわかった。PMCアニオンと種々のP^-ベンゾキノン類との反応速度定数をストップトフロー法で決定し、その対数を電子移動の自由エネルギー変化に対してプロットした。得られたプロットをマーカス式でフィッティングすることにより、PMCアニオンからP^-ベンゾキノン類への電子移動反応の再配列エネルギーを決定した。以上の結果から、フェノール性抗酸化物質は、強塩基の存在下で、非常に強力な還元力を有するフェノレートアニオンに変わり、酸素を電子移動還元して活性酸素種を発生することが明らかとなった。
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