2009 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫サイトカインPPの活性化機構、及び免疫応答における役割に関する研究
Project/Area Number |
21790063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜本 洋 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (90361609)
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Keywords | カイコ / 自然免疫応答 / サイトカイン / 細菌感染 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
自然免疫応答は病原菌などの防御に働く第一線の応答機構として重要である。これまでの研究から自然免疫のみを有するカイコにおいて、昆虫サイトカインparalytic peptide(以下PP)の活性化が、複数の免疫関連因子の発現上昇、及び細菌感染抵抗性に必要であることを明らかにしている。当該年度においては、PPの活性化された後の、下流のシグナル伝達経路について検討を行い、PPの活性化によってp38 MAPKの活性化が起こること、及びその活性化が抗菌ペプチド等の複数の免疫関連遺伝子の発現に必要であることを明らかにした。また、PPの活性化に伴って一酸化窒素合成酵素(BmNOS)遺伝子の発現が誘導され、さらにNOシグナルが、p38 MAPKの活性化を誘導し、抗菌ペプチド遺伝子及び貪食関連遺伝子の発現上昇、カイコの細菌感染抵抗性の上昇に必要であることを初めて見いだした。従って、PPはNOシグナルを介してp38 MAPKを活性化し、細胞性免疫(貪食)や液性免疫(抗菌ペプチドの生産)を通じて、細菌感染抵抗性の上昇を示すと考えられる。また、NOが細胞性免疫及び液性免疫の両方を制御することを示唆した初めての知見である。さらに、PPの活性化によって、薬物代謝に関わるシトクロームP450遺伝子の発現上昇がおこり、その阻害剤によって細菌感染抵抗性が低下する可能性が提示された。一方、PPを活性化させる機構の解析として、βグルカンにより腸管から放出される、PPを活性化させるペプチドと考えられる因子を発見した。これはPPが他のサイトカインによって制御されることを示唆する知見である。以上の結果は、昆虫での病原菌感染抵抗性に寄与する、サイトカインネットワーク、及び一連のシグナル伝達経路を明らかにする初めての研究成果であり、自然免疫応答における細菌感染に対する宿主の抵抗戦略を明らかにする上で重要な知見である。
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Research Products
(6 results)