2010 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん発作感受性遺伝子MMPの機能的役割と発現機構の網羅的解析
Project/Area Number |
21790068
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 博之 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (70402568)
|
Keywords | てんかん / MMP / 海馬 / 苔状線維 / BDNF / キンドリング |
Research Abstract |
本研究では、「難治性てんかんは、マトリックスメタロプロテアーゼ-9(matrix metalloproteinase-9 : MMP-9)による異常なシナプス可塑性が関与する」との作業仮説を立て、ペンチレンテトラゾール(pentylenetetrazole : PTZ)連続投与によりキンドリングを形成したマウス(てんかんモデルマウス)の海馬におけるMMP-9の機能解析と発現機構の解明を最終目標とする。昨年度は、キンドリングマウスで認められるMMP-9の活性化は痙攣誘発因子であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)のmature化を引き起こすことで、キンドリングの形成を導く可能性をタンパク発現レベルで示した。平成22年度は以下の点を明らかにした。 1.てんかんおよび痙攣発作におけるMMP-9とBDNFとの関係:行動学的解析 野生型マウスにおけるPTZ誘発キンドリングの形成は、BDNF scavengerを脳室内に注入すると抑制された。PTZ誘発キンドリングの形成に抵抗性を示すMMP-9-(-/-)マウスの脳室内にBDNF scavengerを注入しても、PTZ誘発キンドリングに対する相加的抑制効果は認められなかった。野生型マウスの海馬歯状回にpro-BDNFを微量注入すると、PTZ誘発キンドリングの形成は増強された。MMP-9-(-/-)マウスの海馬歯状回にpro-BDNFを微量注入すると、若干の増強は認められなかったが有意なものではなかった。 2.クロマチンリモデリング PTZを連続投与すると海馬内ヒストンH3タンパクのアセチル化が有意に増加した。 以上の結果から、キンドリングマウスで認められるMMP-9の発現増加・活性化はヒストン修飾を介しており、BDNFとの相互的関与によりキンドリングの形成を導く可能性が示唆された。
|