2010 Fiscal Year Annual Research Report
視交叉上核内局所神経回路の体内時計機能における生理的役割の解明
Project/Area Number |
21790073
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 賀章 京都大学, 薬学研究科, 助教 (30467427)
|
Keywords | 体内時計 / 視交叉上核 / AMPA受容体 / 時計遺伝子 / Per / サーカディアンリズム |
Research Abstract |
ヒトも含めほぼ全ての生物は、自身の体内に約24時間周期の固有の時計を持つ。この体内時計は、Per1等の時計遺伝子の自律した転写翻訳リズムにより生み出され、ホルモン分泌、血圧、体温、代謝のリズムを制御する。しかし、体内時計の周期は完全に24時間ではない。そのため、私たちは日々、地球の自転に伴う24時間周期の明暗リズムに、自身の体内時計を合わせる必要がある。この補正作用を、体内時計の同調機能という。同調機能の失調は、睡眠障害や代謝障害など様々な疾病の原因となるため、その詳細なシグナル伝達機構の解明が待たれていた。体内時計を制御する最高位中枢は、脳の視交叉上核(SCN)であり、網膜に到達した光刺激はSCNに伝達される。この経路はグルタミン酸作動性で、SCN神経細胞はAMPA型のグルタミン酸受容体を発現している。そこで私は、恒暗条件下で行動しているマウスの主観的夜の初期の時間に、AMPAをSCNに局所投与した。すると、マウスの行動リズムの位相が約70分間後退した。この位相後退は、AMPA受容体のアンタゴニストの同時投与で消失した。続いて私は、Per1の転写発現の概日リズムに対するAMPA受容体シグナルの効果を検証した。Per1のプロモーターでルシフェラーゼを発現するトランスジェニックマウスのSCNのルシフェラーゼ発光量は約24時間周期で振動する。この振動のピークから6時間後(主観的夜の初期に相当)にAMPAを投与すると、次の発光リズムの位相は約3時間後退し、14時間後(主観的夜の後期に相当)では、位相は約2時間前進した。これらの実験結果は、同調機能の分子メカニズムにおいて、AMPA受容体のシグナルの重要性を示唆するものである。
|
Research Products
(6 results)