2009 Fiscal Year Annual Research Report
膜リン脂質の分子運動を標的とした新規がん浸潤・転移阻害剤の開発に向けた基盤研究
Project/Area Number |
21790076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 詩子 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (90362392)
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Keywords | 脂質 / 細胞運動 / 癌 / 阻害剤 |
Research Abstract |
生体膜を構成するリン脂質分子は、フリップ・フロップと呼ばれる脂質二分子膜を横切る反転運動を行いながら、二分子膜の内外で非対称に分布している。申請者は、フリップ・フロップの制御に関与するタンパク質複合体(リン脂質輸送分子ATP8A1とその制御分子mROS3/CDC50A)が細胞運動の制御に重要な役割を担っていることを見出した。本研究では、リン脂質フリップ・フロップによる細胞運動制御のメカニズムの解明とともに、フリップ・フロップを阻害する有機化合物および天然物小分子化合物を検索し、新規の細胞運動阻害剤の同定を目的とする。ATP8A1またはmROS3/CDC50Aの発現を抑制すると細胞の運動能が低下し、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の細胞内へのフリップ・フロップ輸送が減少した。リン脂質結合プローブによるトラップ実験では、PE結合プローブで処理した場合にのみ細胞運動の阻害が観察された。一方、ATP8A1は、細胞運動時に先導端に強く局在してアクチンと共局在し、ATP8A1発現抑制細胞では、葉状仮足でのアクチン骨格制御に関わる低分子量Gタンパク質Rac1およびArf6の形質膜への局在化の減少がみられた。また、PE結合プローブ処理により葉状仮足におけるアクチン骨格の異常が観察された。以上の結果から、ATP8A1とmROS3/CDC50Aからなる複合体が、フリップ・フロップによる形質膜PEの配向性変化を介して、先導端におけるアクチン骨格の再編を制御し、細胞運動制御に関与している可能性が考えられた。
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