2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規プロスタグランジンD2受容体CRTH2を介した高次脳機能調節
Project/Area Number |
21790077
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (10335367)
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Keywords | CRTH2 / Postaglandin D2 / lipocalin-type prostaglandin D synthase / PACAP / knockout mice / c-Fos expression / sickness behaviors / motivation |
Research Abstract |
本研究では、研究代表者らが行った神経ペプチドPACAPの中枢機能解析の過程でその下流標的として同定した、リポカリン型プロスタグランジンD2(PGD2)合成酵素(L-PGDS)、およびPGD2のII型受容体(DP2,CRTH2)に着目し、明暗環境順応、自発運動/探索行動、神経突起伸展への関与を解析することで、CRTH2の創薬標的分子としての可能性評価を行うことを目標として研究を行い、平成22年度は以下の成果を得た。 1.前年度までに、光誘発性の行動リズム(体内時計)制御にPACAP-L-PGDS-CRTH2系が関与することを見出した。今回L-PGDSの遺伝子欠損マウス(KO)を用いた分子基盤解析を行った結果、本シグナル系は既知の機構(時計遺伝子perl誘導を介した機構)とは異なる機構で本制御に関わる可能性を見出した。 2.CRTN2-KOで認められる特有のsickness behavior発現の消失(前年度に同定)に関して、CRTH2拮抗薬脳室内投与による行動薬理学的解析および脳内c-Fos発現に関する免疫組織化学的解析を行った結果、脳内(特に扁桃体中心核や視床下部室傍核)CRTH2の本病態発現への関与を示す種々の結果を得た。 3.上述のCRTH2-KOで消失が見られた"新規物体探索行動の減少"に関する詳細解析を行った結果、今回用いたLPS腹腔内投与モデルにおける表現型変化のうち最も顕著な変化であること、またこれが各種炎症性病態時の意欲低下を反映する表現型であることを示唆する各種行動薬理学的データを得た。 本研究により、CRTH2は中枢神経系においても特有の機能を果たすことが初めて見出され、PACAPの下流標的の一つとして、特に体内時計、意欲/好奇心、神経発達制御における選択的関与が強く示された。
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