Research Abstract |
本研究では,難治性遺伝性疾患である嚢胞性線維症(CF)の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)に着目し,CFTRの破綻により発症することで知られる種々の病態(アレルギー,気道炎症)との関連性を明らかにすることを目的とし,種々の検討を実施した.具体的には,CFTRの制御破綻がどのように細胞内環境を変化させ,病態発症に寄与するかについてのコンセンサスを得るため,第1に,変異型CFTR (△F508-CFTR)による炎症関連遺伝子toll-like receptor-2 (TLR2)の発現制御機構の詳細について明らかすることを目的とした.その結果,CF気道上皮細胞において抗CFTRC末端抗体によってのみ認識される25kDaのバンドが検出され,このバンドはセリンプロテアーゼ阻害剤であるTPCKの処理により発現が減少し,主に膜画分に局在するが,一部は核画分に局在する蛋白質であることが示された.さらに,この断片の配列を同定するために検討を進めた結果,この断片は,等電点が約9であるやや塩基性の高いタンパク質であることが示された.また,本研究では第2に,△F508-CFTR発現マウスにおけるTLR2依存的なアレルギー様症状誘発機構の分子基盤を明らかにし,特にアレルギー誘発遺伝子nerve growth factor(NGF)発現誘導機構に関する検討を実施した.その結果,△F508-CFTR発現マウスにおいては,ダニ感染刺激依存的な表皮におけるNGFの発現誘導が顕著であり,その結果掻痒行動を誘発することが明らかになった.
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