Research Abstract |
本研究では,難治性遺伝性疾患である嚢胞性線維症(CF)の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)に着目し,CFTRの破綻により発症することで知られる種々の病態(アレルギー,気道炎症)との関連性を明らかにすることを目的とし,種々の検討を実施した.具体的には,第1に,CFTR_<ΔF508/ΔF508>マウスにおいては,ダニ寄生依存的な皮膚ケラチノサイトからのnerve growth factor (NGF)の発現上昇と,それに伴う末梢感覚神経の伸長が認められ,このことが,マウスの皮膚における掻痒症状を強めることが明らかになった.このとき,CFTR_<ΔF508/ΔF508>マウスは,NC/NgaマウスのようなIgEの増加や皮膚経皮水分蒸散量(TEWL)の上昇は引き起こさなかったことから,CFTR_<ΔF508/ΔF508>マウスは,世界初のダニ感染依存的な「痒み」のみを誘発するモデルとなることが明らかになった.本研究では,第2に,ヒトケラチノサイトの細胞株であるHaCaT細胞において,CFTR機能低下時にダニ抗原の刺激でNGF発現を強く誘導するか否かについて検討した.その結果,HaCaT細胞においてもCFTR阻害剤の処理下で,ダニ抗原に対して顕著なNGFの発現亢進が見られた.本研究は,CFTRの皮膚における生理機能を示唆するものであり,掻痒疾患の新たな治療概念を提起する有用な基礎的知見である.
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