2011 Fiscal Year Annual Research Report
海馬神経興奮に伴ったシアル酸分子種脱離のインビボ解析と記憶形成における役割の解明
Project/Area Number |
21790085
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
南 彰 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (80438192)
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Keywords | 海馬 / 糖鎖 / シアル酸 / シアリダーゼ / 神経 / 記憶 / 電気生理 / インビボ |
Research Abstract |
脳内における主要なシアル酸分子種としてN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)があり、記憶形成において重要な役割を担う。申請者はこれまでに、マイナーなシアル酸分子種であるN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)がラット脳に微量に存在すること、脳内ではNeu5Gcが記憶形成の場である海馬に比較的多く存在すること、海馬でにおいてNeu5Gcを高発現したラットでは有意に記憶能が低下することなどを見出した。シアル酸分子種によって記憶への関与が異なることが示唆される。本研究では平成23年度の研究実施計画に基づき、Neu5Gcによる記憶能低下の原因解明を目的とした。 はじめに、糖鎖からシアル酸残基を脱離させるシアリダーゼが記憶形成やシナプス可塑性(伝達効率の長期増強)に不可欠であることを見出した。そこで、Neu5Gcによる記憶能低下にシアリダーゼが関与するとの作業仮説のもと、Neu5AcとNeu5Gcに対するシアリダーゼの働きを比較検討した。 シアリダーゼの人工蛍光基質である4MU-Neu5Acと4MU-Neu5Gcを利用して、ラット海馬における神経興奮と連動したシアリダーゼ活性の変化を測定した結果、Neu5Acに対する活性は神経興奮に伴い増加した。一方、Neu5Gcに対する活性は、神経興奮に伴い増加するものの、増加の割合は低かった。次に、シアリダーゼ活性染色用の人工基質であるX-Neu5AcやX-Neu5Gcを利用してラット脳内における活性分布をイメージングした。しかし、両者に大きな違いは観察されなかった。次に、血中に存在するNeu5AcとNeu5Gcの脳内移行性を比較検討した。はじめにNeu5AcとNeu5Gcをそれぞれアイソトープ標識し、精製した後、薄層クロマトグラフィーで純度を確認した。次に、^<14>C-Neu5Acまたは^<14>C-Neu5Gcをラットの尾静脈より投与し、脳内移行性を検討した。その結果、両者共に脳内に移行したが、^<14>C-Neu5Gcの方が脳内に比較的長く留まる傾向にあった。以上より、Neu5Gcによる記憶能低下の一因に、シアリダーゼに対する基質特異性の違いが寄与することが示唆された。
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