Research Abstract |
1.小胞体関連分解(ER-associated degradation: ERAD)は,小胞体の変性タンパク質を小胞体から細胞質に排出し,ユビキチン-プロテアソーム系により分解する小胞体ストレスに対する防御機構である.ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1は,アルツハイマー病(AD)の原因タンパク質β-amyloid(Aβ)の前駆体タンパク質(amyloid precursor protein: APP)をユビキチン化し,分解促進することで,Aβの産生量を低下させる.また,HRD1はAD患者大脳皮質においてタンパク質レベルで減少していることをこれまで明らかにしてきた.今回私たちは,HRD1タンパク質の減少機構について検討を行った.まず,基質であるAPP負荷によって,HRD1が減少するか検討したところ,HRD1タンパク質の減少は認められなかった.また,APPとPresenilinの過剰発現により,Aβの産生を増加させたところ,HRD1のタンパク質量が増加したため,AβがHRD1タンパク質の減少の原因ではないことが明らかとなった.一方,AD患者の大脳皮質を1%Tritonの可溶性画分と不溶性画分に分離し,HRD1のタンパク質量を非AD患者群と比較したところ,AD患者の可溶性画分でHRD1タンパク質が減少し,不溶性画分で増加していることが明らかとなった.このことから,HRD1タンパク質の減少は,何らかの理由により凝集し,不溶化したためであることが示唆された. 2.APPの分解に関与するHRD1以外の新規ユビキチンリガーゼとしてRNF19Bを見出し,APPをユビキチン化,分解促進することを明らかにした.一方,RNF19Bを発現抑制した場合,HRD1と同様にAPPが蓄積し,小胞体ストレスが誘発されたものの,HRD1とは異なり,Aβの産生は低下し,アポトーシスは惹起されなかった.今後は,RNF19BのAβの産生機構について明らかにし,AD治療薬のターゲットとなり得るか検証したい.
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