2010 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体タンパク質分解機構のアルツハイマー病発症への関与
Project/Area Number |
21790089
|
Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
金子 雅幸 千葉科学大学, 薬学部, 講師 (10322827)
|
Keywords | 小胞体ストレス / ERAD / アルツハイマー病 / ユビキチンリガーゼ / APP / 小胞体 / ニューロン / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
私たちはこれまで、アルツハイマー病発症に関わるAβの前駆体タンパク質APPが、ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1の基質となることを明らかにした。さらに、アルツハイマー病患者の大脳皮質において、HRD1のタンパク質が不溶化により減少していることを見出している。今回私たちは、HRD1タンパク質減少の原因として、種々の酸化ストレスや小胞体ストレスなどを検討したところ、HRD1およびHRD1と複合体を形成するSEL1Lが、過酸化水素で不溶化することが明らかとなった。一方、小胞体ストレスではHRD1とSEL1Lの不溶化が認められなかった。この結果より、アルツハイマー病の発症機構として、酸化ストレスによるHRD1とSEL1Lの不溶化と、それに伴うERADの破綻が関与する可能性を新たに示された。また、HRD1の減少とアルツハイマー病発症の関連性を明らかにするため、HRD1のノックアウトマウスがアルツハイマー病の症状を呈するか検討した。その結果、HRD1ノックアウトマウスで、記憶力が低下する傾向が認められた。一方、Aβの産生量に関しては、HRD1ノックアウトマウスで低下する傾向にあった。このAβ産生に関する結果は、神経細胞における結果と相反するものとなった。これらの結果に基づいて考察すると、HRD1はAβの産生に必要であり、さらに記憶学習機能に重要であることが示唆される。 今後これらの結果に関して、さらにノックアウトマウスの例数を増やし、様々の実験より検証する必要がある。
|