2010 Fiscal Year Annual Research Report
発がん前駆物質の遺伝毒性発現における異物ー薬物相互作用の研究
Project/Area Number |
21790129
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
関本 征史 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (10381732)
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Keywords | 異物-薬物相互作用 / 発がんリスク / カルシウム拮抗薬 / 多環式芳香族炭化水素 / CYP1A酵素 / 異物排泄トランスポーター |
Research Abstract |
申請者は昨年度の本研究で、ジヒドロピリジン(DHP)系カルシウム(Ca)拮抗薬であるニカルジピン(Nic)が、ヒト肝がん細胞株において、発がん性前駆物質の一種である3-メチルコランスレン(MC)によるCYP1A酵素誘導やDNA付加体形成を相乗的に増強することを明らかとした。本年度は、NicによるCYP1A酵素の相乗的な発現誘導が起こる機構について検討した。 まず、MC以外のCYP1A酵素誘導剤とNicの相互作用を検討したところ、NicはMCと同じ多環芳香族炭化水素類に属するベンゾ[a]ピレンとの同時処理でCYP1A酵素を相乗的に誘導したが、オメプラゾールやβ-ナフトフラボンとの同時処理では相乗作用を示さなかった。次に、種々Ca拮抗薬とMCとの相互作用を検討したところ、Nicを含めたDHP系Ca拮抗薬や類似構造を持つDHP系Caチャネル活性化剤とMCの同時処理により、[^3H]MCの細胞内蓄積の増加および相乗的なCYP1A酵素の誘導が見られるのに対し、非DHP系Ca拮抗薬とMCの同時処理では[^3H]MCの細胞内蓄積は増加せず、CYP1A酵素の相乗的誘導も見られなかった。さらに、異物排泄トランスポーターであるBCRPを阻害すると[^3H]MCの細胞内蓄積が増加することも明らかとした。 これらの結果から、BCRPなどの異物排泄トランスポーターの阻害作用を持つ医薬品は、そのトランスポーターを介して排泄される発がん前駆物質の細胞内濃度を高め、さらに、代謝活性化酵素を相乗的に誘導することで、遺伝毒性を増強する可能性が考えられた。異物排泄トランスポーターを阻害する医薬品には様々なものが知られており、それらが発がんに及ぼす影響を考えていく必要がある。
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Research Products
(9 results)