2010 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀による小脳障害メカニズム「炎症仮説」の分子基盤
Project/Area Number |
21790134
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
廣岡 孝志 東京理科大学, 薬学部, 助教 (50397519)
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Keywords | メチル水銀 / 小脳障害 / 炎症仮説 / 脳微小血管周皮細胞 / アルドース還元酵素 / 細胞膨張 |
Research Abstract |
メチル水銀による小脳顆粒細胞層の特異的かつ重篤な障害は,メチル水銀中毒の重要な徴候である小脳性運動失調の原因である。しかしながら,その障害のメカニズムはよく分かっていない。これに対して,申請者らは,メチル水銀中毒ラットの小脳の病理組織学的研究から,小脳顆粒細胞層の傷害が炎症性変化によって急速に大規模化するという「炎症仮説」を提案している。しかしながら,炎症反応の分子基盤は不明であった。本研究の目的は,メチル水銀により誘発される炎症反応の分子基盤を解明することである。前年度の研究では,メチル水銀が炎症における浮腫形成や炎症細胞の浸潤を促進するヒアルロナンの脳微小血管細胞からの分泌を促進することを明らかにした。糖代謝の副次経路であるポリオール経路の構成酵素であるアルドース還元酵素は,グルコースのソルビトールへの変換反応を触媒する。この酵素の活性化によるソルビトールの細胞内への過剰蓄積が細胞の膨張を引き起こすことが知られている。最近では,TNF-αによる細胞死の誘導や炎症細胞からのサイトカインの放出にも関与することが報告されている。これまでの研究において,申請者は,メチル水銀がヒト脳微小血管周皮細胞を膨張させることを見いだしている。そこで,本年度はメチル水銀による周皮細胞のアルドース還元酵素の発現変化を調べた。その結果,メチル水銀は,周皮細胞のアルドース還元酵素mRNAおよびタンパク質の発現を濃度依存的に増加させた。以上の結果は,アルドース還元酵素が脳微小血管組織や神経細胞におけるメチル水銀毒性発現の標的分子であり,「炎症仮説」おける小脳顆粒細胞死の誘発や炎症性細胞からのサイトカイン放出調節の分子基盤の1つである可能性を示唆している。
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Research Products
(6 results)