2010 Fiscal Year Annual Research Report
エンドサイトーシス抑制によるアドリアマイシン耐性獲得機構の解明
Project/Area Number |
21790138
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 勉 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助教 (00400474)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 |
Research Abstract |
我々はこれまでに真核生物モデルとして有用な出芽酵母を用いて、アドリアマイシン耐性獲得機構の解析を行い、エンドサイトーシス経路の初期過程の抑制が細胞にアドリアマイシン耐性を与えることを見出している。平成21年度は、本耐性獲得機構の解明を目指して、エンドサイトーシス抑制によるアドリアマイシン耐性獲得現象を消失させる遺伝子群の網羅的なスクリーニングを行い、細胞内小胞輸送経路に関わる蛋白質を複数同定することに成功した。さらに詳細に検討を行ったところ、小胞体からゴルジ体およびエンドソームを経由して液胞まで運ぶ小胞輸送経路が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。平成22年度は、アドリアマイシン耐性に関わり、小胞体から液胞に運ばれる蛋白質(X蛋白質)の同定を目指して解析を行った。その結果、X蛋白質はユビキチン化修飾を受け、また、エンドソーム膜上のVps27に認識・補足されるとともに、脱ユビキチン化酵素Doa4によって脱ユビキチン化を受ける蛋白質である可能性が示唆された。したがって、エンドサイトーシスの抑制はユビキチン化蛋白質の小胞体から液胞への輸送を亢進させることによって、アドリアマイシン毒性を軽減している可能性が考えられる。近年、小胞輸送経路の異常が様々ながんの悪性化や化学療法抵抗性に関与することが報告されていることから、本研究によって得られた知見は、新しいアドリアマイシン耐性獲得機構の存在を示唆するだけでなく、小胞輸送系に異常が認められるがんに対する化学療法の効果向上にも貢献出来るものと期待される。
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