2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤の血液毒性を決定付ける薬物トランスポーターの役割
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21790145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 和哉 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (00345258)
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Keywords | 血液毒性 / トランスポーター / 好中球 / 抗がん剤 / 体内動態 / OATP1B3 / MRP2 |
Research Abstract |
本研究では、抗がん剤の血液毒性に関わるトランスポーターの役割について明らかにすべく、臨床研究の結果、既にOATP1B3,MRP2の遺伝子多型とdocetaxelの引き起こす重篤な血液毒性の発現との関連が認められていることに着目し、docetaxelの毒性を決定するOATP1B3,MRP2の役割について、in vitro解析を実施した。その結果、docetaxelは、OATP1B3によって主に肝細胞中へ取り込まれていることが、遺伝子発現細胞ならびにヒト肝細胞を用いた取り込み実験の結果、明らかとなったことから、OATP1B3の遺伝子多型は、docetaxelの肝取り込みを抑制することで、クリアランスを低下させ、血中暴露が上昇した結果、副作用が増強したと考えることができる。一方で、MRP2の遺伝子多型については、docetaxelが代謝により肝消失することから胆汁排泄過程とは考えにくく、血球細胞上のMRP2の機能低下が、血球へのdocetaxelの暴露を上昇させたとする仮説をたて、その実証を試みた。まず、MRP2安定発現細胞を用いて、docetaxelの毒性を観察したところ、細胞内蓄積の上昇とともに殺細胞活性が増強された。一方で、ラット骨髄細胞を用いて、G-CSFによる誘導条件下での血球細胞のコロニー形成に対するdocetaxelの抑制作用について観察した結果、MRP2欠損ラットであるEHBRより採取した骨髄細胞や、MRP阻害剤であるMK571存在下でのコロニー形成に対するdocetaxelの阻害効果は、通常の状態より強く出ることが示唆された。以上の結果より、docetaxelの血液毒性とOATP1B3, MRP2の遺伝子多型との関連は、肝取り込みの低下による全身クリアランスの低下、血球での排出低下による血球での暴露上昇と別々のメカニズムによって生み出されている可能性を示唆することができた。
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