2010 Fiscal Year Annual Research Report
病態時におけるIgGの全身・組織細胞動態およびFcRnの発現・機能の変動解析
Project/Area Number |
21790150
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
永井 純也 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20301301)
|
Keywords | IgG / FcRn / 腎障害 / エンドサイトーシス / メガリン / キュビリン |
Research Abstract |
IgGのヒト血漿中消失半減期は約20日と非常に長い。近年、IgGのFc領域を特異的に認識するレセプターであるFcRnが同定され、IgGの全身および組織細胞動態に重要な役割を果たしていることが示唆されている。 昨年度に引き続きin vivo解析を進めた結果、腎障害性薬物シスプラチンの投与はFITC-IgGの腎蓄積を有意に上昇させることを認めた。IgGの分子サイズは約150kDaであり、正常時においては糸球体におけるサイズバリアのため、尿細管管腔中への移行が制限されている。従って、シスプラチン投与によるFITC-IgG腎蓄積の上昇は、糸球体サイズバリアの破たんによって尿細管管腔中へと漏出してきたFITC-IgGが、尿細管上皮細胞において取り込まれた結果によると考えられた。一方、尿細管上皮細胞におけるIgGの取り込み機構については、FcRnの関与が示唆されているが、未だ不明な点も多い。また、尿細管における低分子量タンパク質やペプチドの再取り込みには、メガリンやキュビリンといったエンドサイトーシスレセプターが重要であることが知られているが、IgGの再取り込みへの関与については明確ではない。そこで、培養腎上皮細胞OKを用い、FITC-IgGの取り込み解析を行った。その結果、FITC-IgG取り込みは生理的pH条件下に比べ、弱酸性(pH6.0)条件下において顕著に低下した。また、クラスリン介在性エンドサイトーシス阻害剤などの処理によって、FITC-IgGの取り込みは有意に低下した。さらに、アルブミンやトランスフェリンなどのメガリン/キュビリンリガンド共存によっても阻害された。これらの結果から、糸球体腎炎時などにおける糸球体バリアー機能の低下時において、尿細管管腔中に漏出してきたIgGがメガリン/キュビリンを介したエンドサイトーシスによって尿細管上皮細胞内に取り込まれる可能性が示唆された。
|