2010 Fiscal Year Annual Research Report
ラット単離胃粘膜を用いた胃小窩壁細胞剥離現象の解析と胃酸分泌関連疾患への応用展開
Project/Area Number |
21790186
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
豊嶋 典世 (青山 典世) 宮崎大学, 医学部, 助教 (10468035)
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Keywords | 細胞・組織 / 胃粘膜 / 壁細胞 / 超微形態 / オートファジー |
Research Abstract |
本研究はラット単離胃粘膜モデルで見出された胃小窩壁細胞剥離現象の詳細を明らかにし、びらん性胃炎等の胃酸分泌関連疾患との関連性を検討することを目的とする。ラット単離胃粘膜とは、ラットの胃粘膜を細片化し培養液中で長期培養することを可能にした実験モデルであり、このモデルにおいて酸分泌刺激を加えた胃小窩の壁細胞が剥離するという現象を見出した。これまでの研究結果から、剥離前後の壁細胞内には通常みられないプロトンポンプを有する多重膜構造物が出現しており、近接する粘液細胞が細胞欠損部を埋めるかのようなダイナミックな細胞動態を示す所見が得られていた。壁細胞剥離の制御が可能になれば新たな胃酸関連疾患の予防や治療法の開発に繋がるものと期待される。 本年度は、単離胃粘膜実験モデルと凍結技法を応用してヒスタミン・H2レセプター阻害剤・プロトンポンプ阻害剤に代表される酸分泌に関連する試薬が壁細胞剥離現象に与える影響を検討した。食餌条件を変えたラットの胃から単離胃粘膜を作製し、薬物添加培養液中で5~90分刺激して各薬剤の反応性を比較検討した結果、絶食したラットから作製した単離胃粘膜にヒスタミンを添加した(酸分泌を刺激した)場合、培養時間経過により胃小窩への壁細胞剥離数が増加した。一方、再摂食させたラットにH2-レセプター阻害剤を作用させた(酸分泌を抑制した)場合はこの現象が抑制された。プロトンポンプ阻害剤を作用させる同様の培養実験を行ったところ、H2レセプター阻害剤と同様に剥離現象が抑制された。これらの結果から、酸分泌と壁細胞剥離現象との正の相関性が示された。 剥離後壁細胞の細胞死に関する免疫組織化学的解析の結果、MAP1LC3(microtubule-associated protein light chain3,酵母のオートファジー必須因子Atg8の哺乳類アナログ)陽性であり、壁細胞剥離現象にはオートファジーを介したメカニズムが関与することが示唆された。
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Research Products
(1 results)