2010 Fiscal Year Annual Research Report
フェロモンシグナリングの動的機能形態学 -発情期フェロモンとその受容細胞の同定-
Project/Area Number |
21790188
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
阿久津 仁美 岩手医科大学, 医学部, 助教 (30398482)
|
Keywords | フェロモン / カルシウムイメージング / 鋤鼻器 / 生理活性物質 / バイオアッセイ / ラット / 尿 |
Research Abstract |
【具体的内容】本研究では,雄ラット鋤鼻感覚細胞のカルシウムイメージング手法をバイオアッセイ系として,雌ラット尿中に特異的に存在する活性物質(フェロモン)を同定することを目的とする。HPLCの疎水性カラムに通して吸着させた雌ラット尿中成分を,アセトニトリルにて濃度勾配溶出させたところ,ほとんどの尿中成分は低濃度(0-15%)のアセトニトリルに溶出した。回収した各フラクションの生理活性を,平成21年度に確立した"蛍光顕微鏡ベースのバイオアッセイシステム"にて試験すると,強い活性を有する発情前期の雌ラット尿から分取されたフラクションにおいて,特異的な細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こす生理活性を捉えることができた。 【意義】HPLCによる分析法は,未知の雌ラット由来フェロモンが含まれる分画を,失活することなく絞り込める手法であり,尿中フェロモン分析に有用である可能性が示された。蛍光顕微鏡ベースのバイオアッセイ系は,鋤鼻感覚細胞のカルシウムダイナミクスを,感覚上皮全体や細胞集団レベルで観察・解析することが可能である。共焦点レーザー顕微鏡と比較すると情報量が多く,数多いフラクションの生理活性を試験するために非常に効率的な手法である。また,一般的に活性が低下していると思われるHPLCフラクションの活性を明瞭に測定できるほど高感度であるため,尿分析とこのアッセイを組み合わせれば,フェロモン活性を有する分子を同定できる司能性が高い。 【重要性】本研究では,ラットのフェロモンを同定する手法を開発しつつある。ラットフェロモンの同定は,徐々に明らかにされているマウスフェロモンの同定と併せて,哺乳類の雌雄間の情報伝達手段の解明と,種特異的なフェロモン情報伝達を明らかにすることから,生物学的に重要な意味を持つ。また,フェロモンの構造や化学的特性からフェロモン受容体が特定されれば,その受容体を発現する鋤鼻感覚細胞の特性やそのリガンド特異的反応の意味を解明でき,フェロモン刺激が制御する個体の低次・高次脳機能を明らかにできる可能性があることから,神経科学的にも重要である。
|