2010 Fiscal Year Annual Research Report
循環調節中枢ニューロンによる化学受容性応答と高血圧疾患の関連性の解析
Project/Area Number |
21790196
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小金澤 禎史 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教 (80431691)
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Keywords | 循環調節 / 高血圧 / 交感神経 / 化学受容器 / 低酸素 |
Research Abstract |
高血圧は、脳卒中、腎疾患、心疾患などの原因となる世界的にもきわめて重大な疾患である。現時点では、高血圧患者のほとんどが、原因が明確ではない本態性高血圧に分類されており、このような現状においては、血圧調節の基本的なメカニズムを再検討する必要がある。近年、高血圧患者において、先天的要因による脳内の血流不足、すなわち、中枢性低酸素が高血圧疾患をもたらしている可能性を示唆する報告がなされた。しかしながら、なぜ脳内の酸素不足が高血圧をもたらすのか?についての明確な答えは得られていない。本研究では、in situ標本であるラットの人工脳脊髄液灌流標本を用い、循環調節中枢ニューロンがもつ低酸素センサーの本体を明らかにし、高血圧モデル動物において、このシステムを修飾することにより血圧を正常レベルへ低下させることが可能かどうかを検討することをその目的としている。当研究課題においては、これまでに、ラットの人工脳脊髄液灌流標本によるRVLMニューロンからのパッチクランプ記録成功しており、高血圧モデルラットでは、吻側延髄腹外側部ニューロンへの抑制性入力の減弱に伴う交感神経活動の亢進が中枢性高血圧の一因である可能性を示唆する結果を得ている。また、低酸素時における交感神経活動亢進をもたらす吻側延髄腹外側部ニューロンの低酸素センサーの候補の絞り込みにも着手してきた。その結果、近年、吻側延髄腹外側部ニューロンや末梢化学受容器の低酸素センサーの本体であると可能性が示唆されてきた、ヘムオキシゲナーゼが、実際には低酸素時における交感神経活動の亢進にほとんど寄与していないことが明らかとなった。このことは、吻側延髄腹外側部ニューロンの低酸素感受性が極めて特殊な低酸素センサーを利用していることを意味しており、この低酸素センサーが、神経性高血圧疾患治療における特異的な治療ターゲットとなり得る可能性を示唆している。
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