2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しい血管新生制御因子としてのアポリポ蛋白Eの機能解析
Project/Area Number |
21790203
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大久保 信孝 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10432791)
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Keywords | アポリポ蛋白E / 血管新生 / 血管内皮細胞増殖因子(VEGF) / がん / 角膜 |
Research Abstract |
アポリポ蛋白E(アポE)は血漿や脳髄液中で脂質の運搬を行うタンパク質として知られている。これまでにこのタンパク質の欠損や機能不全が動脈硬化や高脂血症、アルツハイマー病に関連することが多数報告されているが、近年加齢黄斑変性症や固形がんなどでみられる血管新生との関係が報告され注目されている。しかし、アポEと血管新生との関係については報告が少なく、その関連性については不明である。本研究ではアポEが血管新生を制御するメカニズムを角膜焼灼による血管新生誘導モデルを用いて明らかにすることを目的とした。 アポE欠損マウスとBalb/cマウスと掛け合わせ、角膜に色素を持たないアポE欠損マウスを作製した。このマウスの角膜に誘導された新生血管の発生、伸長を経時的に観察したところ、血管新生初期の発芽に問題はなかったが新生中期の血管の伸長は起こらず、後期に新生血管の退縮が起こった。この結果はアポEが新生血管の中期において新生血管の伸長に関わっていることを示している。一般的に新生血管の伸長には血管内の血液が漏出することにより起こる。そこでマウス尾静脈より色素を注入し、角膜での新生血管の発芽部位の血液漏出の度合いを調べた。その結果野生型マウスに比べアポE欠損マウスでは色素の漏出が少ないことがわかった。次に分子レベルでの働きについて調べるため血管新生を起こした角膜を破砕しウエスタンブロット法にて血管新生に関わるタンパク質の発現量の変化について調べた。その結果、血管内皮増殖因子(VEGF)とその受容体に関してアポE欠損による発現量の減少はなかった。 本研究によりアポEがVEGF非依存的に血管新生に関わることがわかった。さらに、アポEは血管新生の中期で見られる血液の漏出に関わることがわかった。これらの知見は血管新生のメカニズムの解明に加え、血管新生を伴う疾患のメカニズムの解明、治療などに重要となると考えられる。
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Research Products
(3 results)