2011 Fiscal Year Annual Research Report
褐色脂肪細胞におけるα作用とβ作用の相互作用と肥満
Project/Area Number |
21790215
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
早戸 亮太郎 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 助教 (60440822)
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Keywords | アドレナリン受容体 / 交感神経 / 熱産生 / 肥満 / 褐色脂肪細胞 |
Research Abstract |
褐色脂肪細胞は、げっ歯類やヒト新生児などに多く発現する熱産生器官であるが、最近の研究ではヒト成人にも発現が確認されており、ヒトでの体温維持とエネルギー消費に寄与すると考えられている。 生体では、低温暴露により視床下部温熱中枢が刺激されると交感神経活動が亢進し、交感神経終末よりノルアドレナリンが分泌される。褐色脂肪細胞は、このノルアドレナリンを受け取る事で熱産生を行う。褐色脂肪細胞には二種のノルアドレナリン受容体(α_1受容体、β_3受容体)が存在する。α作用は、滑面小胞体からの大きなCa^<2+>濃度上昇を引き起こす。一方、β作用では、細胞内にてcAMP濃度を上昇させ、中性脂肪の分解を促進すると同時に、中性脂肪から生成された遊離脂肪酸がミトコンドリアに存在する脱共役タンパク(UCP1)を活性化し、H^+勾配を短絡させ、そのエネルギーを熱に変換する。その際、ミトコンドリア内膜が脱分極し、ミトコンドリア内のCa^<2+>が細胞質へ放出され、細胞内は緩やかなCa^<2+>濃度上昇を引き起こす。これら細胞内Ca^<2+>は、NADH脱水素酵素を活性化させ、熱産生をさらに促進する事が分かっている。 最近、私たちの研究により、滑面小胞体とミトコンドリアがCa^<2+>を介して互いに密接に連関していることが解ってきた。β作用に起因したミトコンドリアからの遊離Ca^<2+>が滑面小胞体に作用する事で滑面小胞体からCa^<2+>を遊離する。それに伴い、細胞外からのCa^<2+>を流入させる事がわかった。このチャネルを同定するために、遺伝学的実験、および組織学的実験を行った。その結果、褐色脂肪細胞膜には、TRPC2,3,5,6チャネルのmRNAが、またTRC3チャネルのタンパクが発現している可能性が示唆された。これら受容体を介して細胞外からCa^<2+>を流入させる事で、持続的に細胞内Ca^<2+>濃度上昇を引き起こす事で、持続的な体温維持を行っている事が示唆される。またこの機構を応用する事で肥満の解消に寄与できると考えている。
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