2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経・グリアにおける細胞容積感受性イオンチャネル活性化機構の研究
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21790216
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
秋田 天平 National Institute for Physiological Sciences, 細胞器官研究系, 特任助教 (00522202)
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Keywords | アストログリア / 細胞容積調節 / イオンチャネル / ブラジキニン / グルタミン酸 / 細胞間情報伝達 / 活性酸素種 / カルシウムイオン |
Research Abstract |
今年度はまず、脳内の主要なグリア細胞であるアストログリア(マウス大脳皮質由来)において、炎症化学伝達物質の1つであるブラジキニンが作用すると、通常細胞容積増大に伴って活性化される細胞容積センサー外向整流性陰イオンチャネル(VSOR)が容積増大を伴わずに活性化されることを新たに発見した。この活性化されたVSORを通じて脳内の主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸がアストログリアから放出されることが判明し、そのグルタミン酸が隣接する神経細胞に作用することで細胞問情報伝達が誘起されることが明らかとなり、論文発表した。痛みや腫れ・血圧低下など非常に強い作用を持つことで知られるプラジキニンは、いわゆる典型的な細菌感染等による炎症時のみならず、単純な組織灌流障害を含む様々な種類の傷害時に、ありとあらゆる組織間隙・血管内で容易に産生される物質であることから、今回の発見は脳炎・脳卒中・一過性脳虚血発作時等の脳内情報伝達の機序として非常に重要な意義があると考えられる。このVSOR活性化はアストログリア内活性酸素種(ROS)生成を通じて引き起こされることも判明したが、現在はそのROS生成とそれに先行して誘起されるアストログリア内カルシウムイオン(Ca^<2+>)濃度上昇との相関について、特にそのCa^<2+>濃度上昇に関わる各種Ca^<2+>チャネル分子開口部近傍数十ナノメートル(1ナノメートルは10^<-9>メートル)以内に形成される高Ca^<2+>濃度勾配(Ca^<2+>ナノドメイン)を介するROS生成制御の可能性について詳細に検討中である。今後この相関が明らかになることにより、ブラジキニンの作用が1個のアストログリア細胞のどの程度の微細構造レベルで制御されうるのか、どの程度のプラジキニンの局所的な作用が意義を持つのかが判明し、今回発見された機序の病的意義が一層鮮明になることが期待される。
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Research Products
(5 results)