2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経・グリアにおける細胞容積感受性イオンチャネル活性化機構の研究
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21790216
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
秋田 天平 生理学研究所, 細胞器官研究系, 特任助教 (00522202)
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Keywords | アストログリア / ブラジキニン / 細胞容積調節 / イオンチャネル / カルシウムイオン / Ca^<2+>ナノドメイン / 細胞間情報伝達 / ATP |
Research Abstract |
前年度発見した、脳内の主要なグリア細胞であるアストログリア(マウス大脳皮質由来)における炎症化学伝達物質ブラジキニン作用時の細胞容積センサー外向整流性陰イオンチャネル(VSOR)活性化機構に関して、今年度は先ず細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>)濃度上昇とその活性化機構との相関について検討した。その結果、ブラジキニン作用直後のCa^<2+>濃度上昇をもたらすCa^<2+>チャネル(IP_3受容体及びTRPC1)の開口部近傍、約20ナノメートル(1ナノメートルは1000分の1ミクロン)以内の高Ca^<2+>濃度領域「Ca^<2+>ナノドメイン」内で蛋白質リン酸化酵素(PKC)が活性化され、それがVSOR活性化を介在していることが判明した。この機序は、例えば一過性の血圧上昇等で脳内血管が微細な傷害を受けた際に漏れ出た微量のブラジキニンに対しても、その作用部位の近傍で確実にVSORを活性化し、そのVSORを通じて局所的に細胞容積調節(細胞微細突起の形態変化等)やグルタミン酸等の更なる化学伝達物質の放出を誘導するための基盤を与えるものと考えられ、非常に重要な知見である。この知見について今年度は学会発表を行い、またその報告論文を現在投稿中である。更に、ブラジキニン以外のCa^<2+>濃度上昇を誘起しうる他の化学伝達物質についても同様なことが起こるか否かを検討したところ、様々な生理的状況で機械的・化学的ストレスを受けた細胞自らが放出するATPによってもVSOR活性化が誘導されることが判明し、現在更に詳細な検討を進めているところである。今後それについても同様な「Ca^<2+>ナノドメイン」を介する機序が判明すれば、今年度新たに得られた知見は、決して炎症病態時のみならず、生理的な細胞の環境適応時の局所的な容積変化やシグナル伝達をもたらす普遍的機序として、細胞生命の基本原理の解明に繋がることも期待される。
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Research Products
(2 results)