2010 Fiscal Year Annual Research Report
BDNF分泌制御に関与する自閉症関連遺伝子CAPS2の機能解析
Project/Area Number |
21790219
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
篠田 陽 独立行政法人理化学研究所, 分子神経形成研究チーム, 研究員 (80403096)
|
Keywords | CAPS2 / BDNF / GABA / Interneuron / GABA |
Research Abstract |
脳由来神経栄養因子(BDNF)は神経の生存、発達、可塑性等に重要な分子であるにも関わらず、その分泌制御機構は殆どわかっていない。近年神経分泌顆粒に会合しているCAPS2タンパク質が、BDNFの分泌を制御している可能性が示唆された。そこで申請者はCAPS2がBDNFの分泌をどのように制御し、CAPS2によって制御されるBDNFの分泌が生理学的にどのような機能を持つかを検証するために、海馬を材料として用いた研究を行った。CAPS2欠損マウスの海馬培養細胞にBDNFに蛍光タンパク質を融合したものを発現させ、これとCAPS2を共発現させた場合とさせない場合で比較したところ、BDNFの分泌量、速度、頻度がCAPS2存在下で著しく促進されることを見出した。BDNFの分泌は興奮性および抑制性ニューロンの両方に影響を与える事が知られているが、CAPS2欠損マウスでは特に抑制性ニューロンの数、シナプス数、シナプスあたりの小胞数が有為に減少していることが確認された。これに対して興奮性ニューロンにおいては、その形態の変化は殆ど観察されなかった。電気生理学的手法を用いてシナプス機能を検討したところ、CAPS2欠損マウスにおいて抑制性シナプス伝達の有為な低下が観察された。また、長期可塑性の一つである長期増強(LTP)も減少しており、この減少は抑制性シナプス伝達異常によるものであることが明らかになった。海馬における抑制性ニューロンの異常は、不安行動に影響を与える事が知られていたため、CAPS2欠損マウスにおいて種々の行動テストを行ったところ、その多くの実験において不安行動を示す事が示された。これらのことから、CAPS2は海馬においてBDNFの分泌を促進する機能を有しており、これにより制御されるBDNFの分泌は、抑制性ニューロンの発達に影響を与え、これが不安行動を惹起していると考えられる。
|
Research Products
(6 results)