2010 Fiscal Year Annual Research Report
マウス自発運動開始時の大脳皮質活動と圧反射性血圧調節―動機づけ行動との関連―
Project/Area Number |
21790224
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
増木 静江 信州大学, 医学系研究科, 助教 (70422699)
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Keywords | 運動 / 脳血流 / vasopressin V1a受容体 / 血圧反射 / 脳波 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1)自発運動に先立つ大脳皮質活動の上昇と血圧反射抑制は、運動開始時の昇圧反応を惹き起こすために必要であるか、さらに、2)この一連の反応におけるvasopressin V1a受容体の役割を検証することである。 我々はこれまでの研究で、大脳皮質活動が上昇し、血圧反射調節を抑制するとマウスは高頻度で自発運動を開始することを明らかした。そこで次に、Vasopressin V1a受容体遺伝子欠損マウス(V1a KO,n=8)と正常マウス(WT,n=8)を用いて、この反応にVasopressin V1a受容体が関与するのか、を検討した。測定期間12時間のうちの全安静期間~8.5時間を解析対象とし、血圧反射ゲイン(ΔHR/ΔMAP)は血圧の自発性動揺(ΔMAP)に対する心拍数変化(ΔHR)より4秒ごと求めた。このΔHR/ΔMAPの算出はΔMAPとΔHRの相互相関関数R(t)が有意であった期間に行った(P<0.05)。大脳皮質活動は脳波のθとδ波のパワー比から4秒ごとに求めた。その結果、両群において、θ/δ比の自発的変化はR(t)の変化と同期していた。しかし、θ/δ比とR(t)が有意に正相関する期間は、V1a KOマウスでは全安静期間の38±4%で、WTマウスの62±3%と比較して有意に低値であった(P<0.001)。次にθ/δ比のレベルを基準に、R(t)とΔHR/ΔMAPを6つのbinに分割したところ、V1a KOマウスではいずれのパラメータもθ/δ比と比例しないのに対して(P>0.1)、WTマウスではR(t)とΔHR/ΔMAPの両方がθ/δ比と正比例した(P<0.001)。さらに、θ/δ比が上昇した後にマウスが運動を開始する確率は、V1a KOマウスでは24±4%とWTマウスの61±5%と比較して有意に低値であり(P<0.001)、この際、V1a KOマウスの血圧反射は抑制されなかった。さらに別の実験で、自発運動パターンを詳細に検討したところ、V1a KOマウスの運動継続時間はWTマウスと比較して40%低値であった(P<0.05)。 以上より、vasopressin V1a受容体は、大脳皮質活動の上昇レベルに応じて、圧反射を抑制させることにより、それに続く自発運動の開始と継続に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(6 results)