2009 Fiscal Year Annual Research Report
DHAによる認知機能向上作用における神経幹細胞の新生とアポトーシスの関係
Project/Area Number |
21790226
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
片倉 賢紀 Shimane University, 医学部, 助教 (40383179)
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Keywords | 神経新生 / ドコサヘキサエン酸 / 記憶 / 脂質 / 神経幹細胞 / 細胞周期 |
Research Abstract |
記憶の定着には海馬での神経幹細胞(NSCs)の増殖・アポトーシス両方が重要であり、両者のどちらか一方でも阻害すると記憶の形成に障害が起こることが報告されている。本研究では、多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)が記憶定着時に起こるNSCsのアポトーシスに与える影響について検討し、DHAの空間認知機能を向上させる機構を解明することを目的としている。DHAを8週間前投与したラットの学習実験試行中の脳内NSCsの増殖やアポトーシスの程度を検討した。その結果、8週間のDHAによって、海馬歯状回の新生細胞数が有意に増加していることが明らかとなった。現在、行動試験試行中に起こる細胞の運命について解析を行っている。 次に、DHAがNSCsの増殖やアポトーシスに与える影響について培養神経幹細胞を用いて検討した。DHAは0.01-1.0μMの濃度ではNSCsのニューロンへの分化を促進したが、5、10μMの濃度では細胞の生存率が低下した。このことはDHAの濃度によってNSCsに対する作用が異なることを意味している。また、NSCsの分化、増殖を制御しているNotchシグナルに対するDHAの影響について検討した。Notchシグナルの下流遺伝子Hes1はNSCsの分化を抑制し、増殖を促すが、本研究でDHAはこの遺伝子、タンパク質の発現量を有意に抑制することが分かった。また、ニューロンへの分化を促進するneurogenein1、NeuroDの発現量をDHAが亢進することも明らかにした。さらに、DHAは細胞周期を制御するp21およびp27の発現量を増加させることによって、G1期からS期への移行を阻害することも明らかにした。これらの結果はDHAがNSCsのニューロンへの分化を促進するために細胞周期を制御していることを示しており、DHAがNSCsの増殖とアポトーシスを制御していることを示すものである。
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