Research Abstract |
エンドセリンA型受容体(ET_AR)をはじめとするG_qタンパク質共役型受容体が活性化されると,ストア作動性Ca^<2+>チャネル(SOCC)や受容体作動性Ca^<2+>チャネル(ROCC)を介して,細胞外のCa^<2+>が細胞内へ流入する。そして,SOCCやROCCとして機能する分子として,7種類のアイソフォームから成るTRPCチャネルが同定されている。最近,私達は,ET_AR刺激によって引き起こされる受容体作動性Ca^<2+>流入にTRPC3・TRPC5・TRPC6・TRPC7が関与していることを報告した。このうち,心血管系に多く発現しているTRPC3及びTRPC6を介したCa^<2+>流入は,内在性エンドセリンに起因する肺高血圧症の発症・進展に寄与していると考えられている。現在,肺高血圧症の薬物療法として,エンドセリン受容体拮抗薬の他,細胞内cAMP量やcGMP量の増加をもたらすプロスタグランジンI_2誘導体やホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬などが用いられている。しかし,cAMP/プロテインキナーゼA(PKA)系やcGMP/PKG系がET_AR作動性TRPCチャネルの機能に及ぼす影響については,ほとんど解明されていない。そこで,本研究では,cAMP/PKA系によるET_AR作動性TRPC6チャネルの機能制御に焦点を当てた解析を行った。ET_AR及びGFP融合TRPC6チャネルを安定的に共発現するHEK293細胞において,TRPC6チャネルを介したET_AR作動性Ca^<2+>流入は,アデニル酸シクラーゼ活性化薬処理によって顕著に抑制され,一方,PKA阻害剤処理によって増強された。また,非選択的PDE阻害薬処理によっても,ET_AR作動性Ca^<2+>流入は有意に抑制された。これらの知見から,ET_AR作動性TRPC6チャネルがcAMP/PKA系によって負の制御を受けていることが示唆された。
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