Research Abstract |
エンドセリンA型受容体(ET_AR)刺激によって誘発されるTRPC6チャネルを介した受容体作動性Ca^<2+>流入は,肺高血圧症や病的心肥大などの循環器疾患の発症・進展において,重要な役割を担っている。受容体作動性TRPC6のチャネル活性は,プロテインキナーゼC(PKC)やPKGといったタンパク質リン酸化酵素によるリン酸化によって制御されることが報告されている。しかし,PKAによるTRPC6の機能制御については不明な点が多い。本研究では,PKAによるTRPC6のリン酸化がTRPC6を介したET_AR作動性Ca^<2+>流入に及ぼす影響を解析すると共に,PKAによってリン酸化されるTRPC6のアミノ酸の同定を試みた。ET_ARと野生型TRPC6を安定発現するHEK293細胞において,ET_AR刺激によって誘発されるTRPC6を介した受容体作動性Ca^<2+>流入は,アデニル酸シクラーゼ活性化薬,PKA活性化薬及び非選択的ホスホジエステラーゼ阻害薬の前処理によって顕著に抑制され,一方,PKA阻害薬の前処理によって増強された。TRPC6の点変異体を用いた細胞内Ca^<2+>濃度測定実験において,アデニル酸シクラーゼ活性化薬及び非選択的ホスホジエステラーゼ阻害薬によるET_AR作動性Ca^<2+>流入の抑制は,TRPC6の細胞内N末端領域に存在する28番目のセリン(Ser^<28>)をアラニンに置換することによって抑制された。Phos-tag biotinを用いたin vitro kinase assayにおいて,PKAによるTRPC6のリン酸化は,TRPC6のSer^<28>をアラニンに置換することによって抑制された。以上の結果から,TRPC6を介したET_AR作動性Ca^<2+>流入は,PKAによって抑制性に制御されること,また,この抑制性機能制御において重要な役割を担っているPKAリン酸化部位はSer^<28>であること,が明らかになった。
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