2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳の性分化決定因子としてのPGE2の新規役割の解明
Project/Area Number |
21790247
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
土屋 裕義 自治医科大学, 医学部, 助教 (80508755)
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Keywords | プロスタグランジン / テストステロン / 視床下部 / インドメタシン / 性行動 / 神経突起 |
Research Abstract |
性行動を始めとする生理的な機能は脳の発生段階の特異的な時期に正常なシグナルが入力されることにより獲得される。シグナルを受け取った神経細胞はその後さまざまな脳部位にある神経細胞とネットワークを形成し高次機能を構築する。もし、この時期に正常なシグナルを受け取れなければ成長後の生理機能に異常が現れると考えられている。 申請者の解析から、あるプロスタグランジン受容体サブタイプの欠損マウスでオス型性行動の異常が観察された。オス型の脳の性分化は周産期特異的に生じることが知られているが、この受容体欠損マウスではこの時期のシグナル伝達に異常が生じ、正常なネットワーク形成ができていないと考えられる。そこで申請者が構築した視床下部神経細胞のセルラインの分化系を用いて解析したところ、プロスタグランジンで刺激すると、非常に顕著に神経突起を伸長させることがわかった。一方で、プロスタグランジン合成酵素阻害薬のインドメタシンを投与すると、対照群に比べて突起伸長が抑制された。さらにどのプロスタグランジン受容体サブタイプが関与しているか、各プロスタグランジン受容体サブタイプに特異的な作用薬を用いて解析したところ、性行動異常が見られた欠損マウスと同じ受容体サブタイプで有意な神経突起伸長が観察された。これは脳の性分化においてプロスタグランジンが分化を促進することで正常な神経のネットワーク形成を誘導していることを示唆する結果である。
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