2011 Fiscal Year Annual Research Report
網膜色素変性症により引き起こされる視細胞死の機序解明と新規治療法開発への応用
Project/Area Number |
21790249
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂本 謙司 北里大学, 薬学部, 講師 (80317065)
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Keywords | 薬理学 / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
網膜色素変性症(RP)の原因は遺伝子の変異であり,中でも視細胞ホスポジエステラーゼ6(PDE6)サブユニットの変異は古くから知られている.本実験では,Pde6aに変異を持つRPモデルマウスであるnmf363,およびPde6bに変異を持つRPモデルマウスであるnmf137を用いて,種々の薬物の視細胞保護効果を検討した.Ca^<2+>チャネルブロッカーのシルニジピン,あるいは抗アルツハイマー病薬のドネペジルはこれらのマウスにおいて視細胞保護効果を示さなかったが,活性酸素産生酵素の1つであるNADPHオキシダーゼの阻害薬であるアポシニンや,抗酸化能を併せ持つといわれているCa^<2+>チャネルブロッカーのニルバジピンがこれらのマウスモデルにおいて視細胞保護効果を示すことが明らかとなった。 (1)nmf363マウスの錐体細胞死に対するアポシニンの影響 P16~P26の間,アポシニンを飲水に混和して投与したところ,溶媒投与群で見られた視細胞死や錐体細胞の機能低下が有意に抑制された.さらにPl6~P36の間,アポシニンを飲水に混和して投与したところ,溶媒投与群で見られた視細胞死が有意に抑制され,錐体細胞の機能低下にも抑制傾向が認められた. (2)nmf137マウスの錐体細胞死に対するニルバジピンの影響 P7~P17の間に母体を介してニルバジピンを投与したところ,溶媒投与群で見られた視細胞死や錐体細胞の機能低下が有意に抑制された. 本研究は,活性酸素の発生を抑制したり,活性酸素を消去したりすることによって,RP患者において桿体細胞の脱落に引き続いて起きる錐体細胞の脱落を抑制できる可能性を示している.錐体細胞死を抑制することによって明環境下における視機能を保持できれば,RP患者の生活の質は飛躍的に向上すると考えられる.今後,本研究の成果がRP患者を対象とした視細胞保護薬の開発につながることが期待される.
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