2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790286
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 正人 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (60315299)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / インスリン / ミトコンドリア / 活性酸素種 / セラミド / スフィンゴミエリン / 膵β細胞 / 電子伝達系 |
Research Abstract |
スフィンゴミエリン合成酵素1(SMS1)は、ゴルジ体においてセラミドをスフィンゴミエリンに変換する酵素であり、細胞内のスフィンゴ脂質の局在を調節する重要な役割を担っている。昨年度の本研究においてSMS1欠損マウスの解析を行ったところ、1)高い生後死亡率を示すこと、2)膵島のミトコンドリア機能不全によりグルコース応答性のインスリン分泌が著明に低下すること、3)膵島において活性酸素種(ROS)が増加していること、4)脂肪が萎縮する『痩せ』の表現型を示すこと、5)酸化ストレスマーカーである8-OH-dGが尿中に高濃度で検出されること、などを見出した。そこで本年度の本研究においては、これらのSMS1欠損マウスの示す病態とROS産生増加との関連性について更に解析を進めた。 SMS1欠損マウスの示すインスリン分泌不全の原因を調べたところ、膵島におけるROSの産生増加に加え、ATP合成不全、ミトコンドリア膜電位の異常、ミトコンドリア電子伝達系構成因子の発現上昇、酸化ストレス応答経路の活性化などが観察された。また、膵臓のミトコンドリアにおいては、セラミド類の蓄積が観察された。これらの結果から、SMSI欠損マウスの膵β細胞では、ミトコンドリアにおけるスフィンゴ脂質組成の異常により、ミトコンドリアの電子伝達系の機能不全が生じ、ROSの異常産生による酸化ストレスにより、細胞機能の低下が起きていると推定された。さらに、NACの投与により、インスリン分泌不全が改善されるとともに、糖の取り込みが改善された。これらの結果から、スフィンゴ脂質代謝異常による酸化ストレスの亢進が、SMS1欠損マウスの示すインスリン分泌不全の一因であることが示された。
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