2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規p53標的遺伝子を介したp53経路と癌遺伝子経路のクロストーク
Project/Area Number |
21790299
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Research Institution | 独立行政法人国立がん研究センター |
Principal Investigator |
大木 理恵子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (70356252)
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Keywords | P53 / Akt / がん抑制遺伝子 / がん遺伝子 |
Research Abstract |
多くのがんでAktは異常に活性化しており、Akt活性化はがん化を強く促進する要因の一つである。正常細胞ではAktはp53によって活性化が抑制されている。ところが、ほとんどのがんではp53の機能不全が認められており、がん細胞ではAktが抑制されなくなっている。我々は、これまで機能未知であったPHLDA3遺伝子が、p53によって誘導される遺伝子であることを見いだし、PHLDA3がp53によるAkt抑制を担う重要な遺伝子であることを初めて明らかにした。PHLDA3タンパク質は、Aktタンパク質の活性化に必須な細胞膜移行を抑制する機能がある。がん抑制において、非常に強いがん化能を持つAktの活性を制御する事はとても重要である。実際にPHLDA3の発現を抑制した細胞ではAktの異常な活性化が認められるとともに細胞ががん化している事が示された。さらに、ヒト肺がんにおいてPHLDA3遺伝子の高頻度な欠損とAkt活性の上昇が認められ、PHLDA3の異常ががん化の原因となっている可能性が高いと考えられた。また、PHLDA3を介したp53とAktのクロストークが肺がんのみならず、膵がんでも重要な働きをしている可能性が示唆された。肺がんを始めとして、ほとんどのがんでAktは異常に活性化している。PHLDA3はAktを直接抑制する事ができるため、今回得られた知見は、これらのがんの治療や診断法の開発につながるものである。 さらに、p53にはコドン72における遺伝子多型が存在する事が知られているが、p53経路が癌遺伝子Mdm2やRasの経路と関連し、コドン72におけるp53の遺伝子多型によって癌遺伝子Mdm2やRasの経路の抑制能が異なる事も明らかになった。
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