2010 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞のアピカル膜ドメインの異常を伴う病態に関わる新規シグナル伝達経路の解析
Project/Area Number |
21790307
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
堀越 洋輔 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (60448678)
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Keywords | 細胞極性 / 酸化ストレス / 上皮細胞 / アピカル膜ドメイン / aPKC-Par複合体 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は「イノシトールリン脂質(PIPs)シグナル伝達によるaPKC-PAR複合体の機能制御が、哺乳類上皮細胞のアピカル膜ドメインの形成・制御に関与するか明らかとすること」である。 平成21年度では、極性制御分子であるaPKC,PAR-3,PAR6からなる3者複合体(aPKC-PAR複合体)の機能阻害により、正常な上皮細胞のアピカル膜ドメインの形成が阻害される事を明らかとした。近年の解析から、癌や炎症性腸疾患の病変部位の上皮組織では、アピカル膜ドメインの異常が観察され、それら病態の発生に酸化ストレスが関与すると考えられている。重要な事に、酸化ストレスを培養上皮細胞であるMDCKに処理するとアピカルドメインに局在するaPKCの局在異常が誘導される事を突き止めた。 平成22年度では、酸化ストレス傷害モデルラット肝組織を用いた解析から、aPKC-PAR複合体形成および細胞間接着部位への局在化が阻害される事が明らかとなった。また、PIPs代謝に関わるPI3キナーゼシグナルが活性化しaPKCの異常活性化が確認された。aPKCによるPAR-3のリン酸化は、それら両者の結合を弱めaPKC-PAR複合体形成を阻害する。これらの解析結果から、「酸化ストレス→PI3キナーゼシグナルの活性化→aPKCの異常活性化→aPKC-PAR複合体の形成阻害→細胞極性の異常→細胞傷害」というシグナルカスケードの存在が強く示唆された。本研究により酸化ストレスによる細胞傷害の分子機構の一端が明らかとなった。今後、酸化ストレスが関与する癌、炎症性疾患や動脈硬化などの病態でaPKC-PAR複合体に機能変化が生じているか検討し、それら病態に果たす細胞極性の役割とその分子機構を解明する。これにより、それら病態の治療法の分子基盤の確立を目指す。
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Research Products
(4 results)