2010 Fiscal Year Annual Research Report
ネクチン-アファディン系の上皮-間葉・間葉-上皮転換における役割と作用機構
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21790319
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
扇田 久和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (50379236)
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Keywords | ネクチン / アファディン / 低分子量Gタンパク質 / ネクチン様分子 / がん |
Research Abstract |
接着分子ネクチンおよびネクチンの細胞内領域に結合する分子アファディンは、細胞間接着装置の一つアドヘレンスジャンクションに局在し、別の接着分子複合体であるカドヘリン-カテニン系と共に、アドヘレンスジャンクションの形成に重要な役割を果たしている。アドヘレンスジャンクションを含む細胞間接着の形成・破綻は、間葉-上皮転換あるいは上皮-間葉転換における重要な細胞現象であり、細胞間接着破綻後の細胞運動の亢進は、上皮-間葉転換を促進する要因の一つであると考えられている。また、がんの浸潤・転移では上皮-間葉転換の促進が認められることから、本年度は、ネクチン、アファディンとその関連分子に着目して、上皮-間葉転換の分子機構の解明に向けて研究を行った。ネクチンに構造上類似するネクチン様分子(Necl)の発現とがん患者の予後に関する解析を行い、肺がん患者の手術時切除標本において、Neclファミリーメンバーの一つNecl-5の発現が認められた症例で、有意に術後生存率が低下するとの結果が得られた(Nakai R, et al. Cancer Sci. 2010)。Necl-5は運動する細胞の先導端に存在し、細胞運動を促進させることから、上述の予後不良の原因として、がん細胞の運動亢進があると推測された。さらに,Necl-5の下流で細胞運動を促進する分子機構を検討した。運動先導端ではネクチン非依存的にアファディンが集積し、増殖因子刺激による細胞運動を促進していることを以前に報告した。本研究では新たに、アファディンに結合する別のアダプター分子ADIPが、アファディンと共に、低分子量Gタンパク質Racの活性化促進因子Vav2と相互作用して、Racを活性化し、運動先導端の形成および細胞運動を促進していることを明らかにした(Fukumoto Y, et al. J Biol Chem.投稿中)。
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