2010 Fiscal Year Annual Research Report
SURVIVINを標的とした成人T細胞白血病の治療法の開発
Project/Area Number |
21790324
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
車 暁芳 東京医科大学, 医学部, 助教 (10437973)
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Keywords | ATL / surviving / XIAP |
Research Abstract |
成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia, ATL)におけるsurvivinの高発現が抗がん剤耐性の一つの要因である。survivinは特異的に腫瘍細胞で発現し、がん治療の標的分子として魅力的である。Survivinはdimerを形成して働き、BIR領域を通じてXIAPと結合し、XIAPを安定化させ、caspase-9の活性化を阻害することによってアポトーシスを抑制していると考えられる。我々はsurvivinがdimerを形成する領域(89-103aa)とXIAPと結合する部位(15-38aa)のN末端に膜透過キャリアー(TAT蛋白のProtein transduction domains, PTD)をつけたペプチド(PTD-(89-103aa)とPTD-(15-38aa))を作製した。そのうちのPTD-(15-38aa)は肺線維芽細胞株HELと正常ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECの増殖に影響しないが、種々の腫瘍細胞株(口腔上皮がん細胞株KB-3-1、白血病細胞株HL60、NB4、成人T細胞白血病(ATL)細胞株S1TとMT2)に対して、濃度と時間に依存して細胞の増殖を抑制することを見出した。特にATL細胞株S1Tに対して短時間(2時間)の処理でも、細胞死を誘導したことをGiemsa染色で観察した。PTD-(15-38aa)でS1T細胞を2時間処理し、Annexin VとPIによるFACS解析を行い、アポトーシスが誘導されたことを確認したが、Caspase-3活性の上昇が認められなかった。一方、LC3-IIの発現レベルがPTD-(15-38aa)の濃度に依存して上昇し、p62の発現レベルが低下したことから、PTD-(15-38aa)がS1T細胞のオートファージを誘導したことを示唆した。COS細胞にFlag-XIAPとMyc-survivinをトランスフェクションし、PTD-(15-38aa)のsurvivinとXIAPの結合に対する影響を免疫沈降法で調べ、survivinとXIAPの結合を増強した結果が得られた。以上の結果は、PTD-(15-38aa)が腫瘍細胞、特にATL細胞の増殖を抑制し、オートファージ誘導によってアポトーシスを引き起こすことを明らかにした。PTD-(15-38aa)がsurvivinとXIAPの結合を増強させることと、caspase3が活性化しなかったことから、このアポトーシス誘導作用はcaspase活性化に関与しないことを示唆した。これらの研究によりこのsurvivinを標的としたPTD-(15-38aa)がcaspase3の活性化に関与しないオートファージ誘導によって腫瘍細胞、特にATL細胞のアポトーシスを誘導したことを明らかにした。
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